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2SK68AゼロバイアスMCヘッドアンプの製作記録(2009年9月7日)


はじめに
1.設計と製作
 (1)FETの選択と動作条件
 (2)電源部
 (3)アンプ部
 (4)ケースなど
2.利得、ノイズ、音など

はじめに
 先月、2SK30ATMを10個パラにしたゼロバイアスヘッドアンプを作りました。ノイズは問題なく、いくつかのイコライザアンプと接続してもハムの発生などもなく、安定に動作しています。しかし、比較的出力電圧の高いDL-303を接続した時でも、VM型のAT160MLカートリッジの半分くらいの音量レベルになってしまい、もっと利得があってもいいような感じがします。2009年9月5日に茨城オフ会で低出力タイプのテクニクスのEPC-305MCを鳴らしたときは、更に音量レベルが下がりました。ボリュームをかなり上げる感じになるため、安江さんが戸惑っていました。そこで、利得を20倍にしたヘッドアンプを作ってみることにしました。
 利得が20倍となると2SK30ATMでは苦しいので、2SK68Aを使うことにします。
 前回の2SK30ATM 10パラのアンプは、アンプ基板を取り換えることで他のFETも使えるようにしてありますので、今回は基板だけを作ります。使うFETは、昔、よく使われた2SK68Aです。これは、ヤフオクで取り外し品を安く手に入れてあったものです。

1.設計と製作
(1)FETの選択と動作条件
 計算式などは前回と同様ですが、ページを戻るのも面倒だと思うので同じ内容を記載します。
 無線と実験1976年12月号の牧誠さんの記事からFETゼロバイアスヘッドアンプの設計に必要な式を引用し、計算してみます。 FETは、IDSS(mA)、gm0(mS)とその代表値、IDSST、gm0Tには下式のような関係があります。 (実際のFETは、IDSS が IDSST から離れるに従い、差が大きくなるようです。)

  (1)

 ゼロバイアスでアンプを組む場合、ドレイン抵抗をRD(kΩ)とすると、増幅倍率Aは、
   A=RD×gm0    (2)

 RD(kΩ)に発生する電圧V(V)は、
   V=RD×IDSS    (3)

 となります。

 使用するFETが決まれば(IDSST、gm0Tが決まる)、IDSSから下式によりRDが求まります。

           (4)

 (3)式からRDの電圧降下V(V)が求まります。

 ヘッドアンプに使えそうなFETのIDSSTとgm0Tをデータシートから読み取ってみた結果を下表に示します。2SK68Aは、今回製作したアンプの実測値から逆算した値を修正値として記入しています。また、2SK30ATMは、利得が20倍以上になると実用上、使用できないので書いていません。

表1  ヘッドアンプに使えそうなFETのIDSSTとgm0T
FET IDSST (mA) m0T (mS)
2SK68A 9 15 16.3
2SK117 9 22
2SK170 8 37
2SK369 9 50

 2SK68Aの計算結果を以下に示します。電源部は前回のものをそのまま使いますので、電圧が約18Vあります。FETの最低動作電圧を4Vとすれば、利得Aが20倍ならばIDSSが10mA程度まで、30倍ならばIDSSが6mA程度まで使用できます。


 手持ちの2SK68Aは、ヤフオクで基板からの取外し品を入手したものです。このIDSSを調べてみたら、4mA付近と4.5mA付近に16個程度ずつ集まっていました。(ドレイン-ソース間電圧15V、電流を流してから約2秒後に測定) そこで、8パラにすることにしました。 4mAの方は、30倍の利得のアンプに使うとき、電圧降下が小さくなるので30倍のアンプに使う方がよさそうです。4.5mAの方は、20倍の利得のアンプに使う方がよさそうです。
 IDSSが4.5mA付近のものを、IDSSとgmの合計がほぼ揃うように組み合わせを結果を下表に示します。ch1を右側、ch2を左側に使いました。 当初は牧誠さんの記事を参考に、IDSSTを9mA、gm0Tを15mSと見積もっていたため、RDを1.9kΩと計算していました。このため、1.9kΩに近い2kΩを選び、この1/8である250Ω(1.5kΩを6パラ)になるようにドレイン抵抗を決めました。


 ちなみに、同様の計算を2SK117、2SK170、2SK369でも行ってみました。 (但し実際には、2SK68Aの例にもあるように個体差などにより若干ずれるようです。)







(2)電源部
 電源は、前作と同じです。

(3)アンプ部
 入力抵抗は、前回と同様に240Ωにしています。手元にあるDL-303や、利用者の多いDL-103に合うような値にしています。2SK68Aの全てのゲートには1kΩの抵抗を入れています。ドレイン抵抗は、1.5kΩを6パラにして250Ωとしています。使用している抵抗は、金属皮膜抵抗です。
 出力には、直流カット用に0.33μFのフィルムコンデンサをパラに入れました。出力に入れている3300pFは、 200kHz以上の高域をカットするためのものです。カートリッジのインダクタンスが小さいとケーブルの容量などとの数MHのLC共振で、ラジオの電波や、 周囲のノイズを増幅する可能性があります。この高周波ノイズがイコライザアンプに入ると、ハムが出たり、ラジオが聞こえたりすることがあるのでその対策です。
 電源は、電源基板から来る電流を6800μFで受けた後、100μFのOSコンデンサとフィルムコンデンサを入れています。回路図と基板の配置図から分かるように、 左右のアースを共通にするのはOSコンデンサ以降にしています。


 基板は、ユニバーサル基板を使いました。



組みあがった基板です。


(4)ケースなど
 ケースはタカチのものを使っています。トランスは、絶縁ブッシュでケースから浮かせていますが、効果は分かりません。同様に電源周辺のスイッチ、 コネクタ類は、絶縁性の高いものを選んだつもりです。MCヘッドアンプですから、ケース内の制約はあるものの、 なるべくアンプ部をACラインから離すようにしました。





2.利得、ノイズ、音など
 電源を入れ、各部の電圧をチェックしてしてから、利得を測定してみました。設計ではIDSSTを9mA、gm0Tを15mSと見積もっていたことと、RDが1.9kΩ/8=236Ωとなるところを2kΩ/8=250Ωとしていましたので、利得が21倍の予定でした。実測では、左が23.3倍、右が23.2倍でした。
 IDSSを選別したときは、ドレイン-ソース間電圧15V、電流を流してから約2秒後に測定していました。8パラの組み合わせを選んだときの平均電流は4.5mAになるようにしたのですが、アンプに組み込んで長時間動作させてみると、平均電流は4.55mAと、若干増加していました。
 以上の結果を受けて、設計で用いた表1のIDSSTとgm0Tを変更し、IDSSTを9mA、gm0Tを16.3mSとしています。

 ノイズですが、前作と同様に非常に低いレベルです。音量レベルも、DL-303に接続した場合と、VM型のAT160MLカートリッジの差がほとんどなくなりました。

 音は、DL-303+本アンプと、VM型のAT160MLカートリッジの比較になると思いますが、DL-303+本アンプの方が柔らかく雰囲気のある音、AT160MLはクリアな音の違いが出ています。

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