カスタム検索
|
2006年12月の三土会で、会のスピーカーユニット(以下1号機と呼びます)が破損していることが分 かりました。コーン 紙が歪んでしまっているので、振動系を全部交換する必要があります。1号機をそのまま再現してもよかったのですが、評判の悪かった高音のきつさを改善した 方がいいだろうと考え、新しく2号機を製作することにしま した。材料や製作方法などは、大澤式FE-206Σベースの自作スピーカーユニットと 共通の部分がありますので、そちらも参照して下さい。 |
1. 2号機の製作方針 1号機は、下の写真のようにボビンが見える状態になっており、高音が強めに再生されやすい構造になっています。また、サブコーンが小さめであり、指向性が 鋭いことも高音がきつくなる要因と考えられます。 そこで2号機は高音を抑えるため、ボビンと接触しないようにセンターキャップをかぶせ、ボビンから放射される高音が直接正面に出ないようにします。また 指向性を改善するため、サ ブ コーンの先端とコーン紙の先端位置を同になるまで拡大し、且つサブコーンの広がり角度を70°とすることにします。 壊れる前の1号機 2.ユニットの分解とボビンの加工 2.1 ユニットの分解 まずは、ユニットを分解しました。分解が終わったら磁気ギャップにマスキングテープを貼り、ゴミや鉄粉が入らないようにします。1 号機の作者の大澤さん は、下の写真右のように、コーン紙とボビンを糸で補強していました。今回は、この部分をコーン紙の接着しろで補強することにします。
2.2 ボビンの加工 次にボビンを再利用するため、下の写真のようにして接着剤などを剥がします。力を入れて作業するので、ボビンが壊れないように適当な丸棒を芯にします。 下の写真でボイスコイルの右側が黒く変色していますが、これは磁気回路に入っていた部分です。大澤さんが作ったときに少し沈めていたようで、コーン紙側 に寄っています。 広い会場で使っていたので、かなりパワーが入り、発熱がすごかったことが分かります。 またこの状況から、発熱するのはインピーダンス が大きくなる磁気回路の部分であることが分かります。 接着剤を取り除いた状態です。ボイスコイルは変色しているものの、変形などはないので このまま再利用します。 6Nの銅線をボイスコイルの線とハンダ付けしておきます。 3.コーン紙の製作 3.1 採寸とコーン紙の形状決定 1号機のメインコーンの構造はそのまま継承しますので、寸法を測り、方眼紙に、フレーム各部の寸法、ボビンとコーン紙の接着位置、ギャップ深さ、ボイス コ イルの位置などを実寸で書き入れていきます。次に、 コーン紙の開き角度を分度器で測ります。 サブコーンは、70°になるように書き込みます。センターキャップは、ボビンから少し浮くように書き込みます。 |
||||
3.2 コーン紙切り抜きと作成 まず、上の図からコンパスで長さを測り、方眼紙 (採寸図と同じ方眼紙の上の方に描くのが便利) に下図のように作図します。 切取り角度は、コーンの開き角度をθとすると、下式になります。 切取り角度=(1-sin(θ/2))×360° これを、伊勢型紙(渋紙(型地紙)11番)に同じように線引きします。この場合、コーン紙同士の接着しろの線は表面に、他は裏面に線を引きます。こうす ると、コーン紙を接着するときに 半円の曲線を表面に出して接着するこ とができ、仕上がりが綺麗になります。 作図が終わったら、コンパスの鉛筆部分を針に交換するか 或いはデバイダを使い、メインコーンの折り返し線Cに針で軽く傷を付 けます。 これが終わったら、円切りカッターで切り抜きます。このとき中心針に強い力が加わるので、伊勢型紙だけだと中心点が広がってしまって円が正 確に切り取りできなくなったり、中心点がずれてしまったりするので、下の写真に示すように両面テープで必要部分を接着した方が安全です。 切り抜きが終わったら、紙を傷つけないように両面テープを静かに剥がします。 接着しろは切り抜きを忘れがちですので注意します。また、刃を入れる 順番を間違えると切り抜きできなくなりますので、後に続く作業を良く考えて切ります。 サブコーン、センターキャップも同様の作業で切り抜きます。 切り抜きが終わった状態です。 3.3 ボビンとコーン紙接着部分の加工 メインコーン紙は、接着しろでボビンと接着しますので、接着しろを作っておきます。 3.4 コーン紙の接着 コーン紙はボンドSUなどの強力高速硬化型の接着剤で接着します。接着面が動かなくなるまで、指でしっかり固定しま す。接着するまで1分間くらい時間がかかるので、この間、ずれていたら修正が可能です。一旦接着してしまえば、それまでくっついていなかったことが不思議 なくらい剥がれることはなくなります。この手の接着剤は、接着後しばらくベタベタした感じがありますが、1週間くらいすると乾いた感じになります。 4. エッジの作成 ここでは、楮揉み紙(銀座 伊東屋などで購入可能)を使いました。これだと、柔らかいので手で揉むだけで使えます。) まず、エッジの型紙を作ります。採寸図からコンパスで長さを測り採り、厚紙を下図のように切り出します。エッジ部分は、短くしたため14mmとしまし た。 この型紙を楮手揉み和紙に当て、スリットに沿って折り返し線を書きます。次に、デザインカッターで切り抜きます。紙が動かないよう にうまく押さえて作業する必要があります。切り抜いたら、適当なカッターで三角切り抜き部分を写真のようにカットします。写真右側の、オルファ"別たち" が作業性良好で便利です。 |
||||
5.組み立て (1) ダンパー糸張り ダンパー糸は、1号機と同じ位置に張ります。 この作業は組み立てる1日以上前に強めに予備張りしておきます。そして、組み立てるときに、張力を調整し て糸を固定します。 (2) ボビンの位置決め、コーン紙とボビンの接着 及び サブコーンの取付け まず、ボビンにコーン紙を嵌め込んでみます。コーン紙がちょっときつく入るくらいが適当です。小さすぎて入らない場合は、接着しろを少しずつ広げます。ボ イスコイルのリード線は、コーン紙の上に出るようにしておきます。 次に、ボビンを磁気回路のギャップに挿入し、下の写真のようにテレホンカードを幅2~3mmに切ったスペーサーで仮止めします。ボイスコイルがギャップ か ら2mm程度出るようにします。このとき、コーン紙がダンパー糸に僅かに触れ(0.5mm位ならば、離れて いてもOK)、かつダン パー糸がコーン紙に押されることなく真っ直ぐになるようにコーン紙の位置を調 整します。 以上の作業が終わったら、ボビンの位置がずれていないか、再確認します。OKであれば、まず表側からコーン紙とボビンをエポキシ接着剤 で接着 します。接着剤が固まったらスペーサーを外し、コーン紙とボビンを取り出し、接着しろにエポキシ接着剤を塗り接着します。このとき磁気ギャップには、マス キングテープを貼っておくことを忘れないように。 次に、ボイスコイルリード線を通す穴をコーン紙に開けます。ダンパー糸と干渉しない位置であれば、どこでもOKです。 その穴に6N銅線を通し、コーン紙上に這わせ、表面にはDBボンド黒を塗って固定します。 その後、サブコーンを取り付けます。きつければヤスリでサブコーンを軽くけずり、合わせ込みます。サブコーンをセットできたら、DBボンドで接着しま す。 (3)ダンパー糸とコーンの接着、リード線の接着 ボビン・コーン紙をフレームにセットし、テレホンカードのスペーサーで仮止めします。5(2)と同様に、糸ダン パーコーン紙がダンパー糸に僅かに触れ(0.5mm位ならば、離れていてもOK)、かつダン パー糸がコーン紙に押されることなく真っ直ぐになるように位置を決めます。 ダンパー糸とコーン紙の接触部分に信越シリコーンを盛ります。ダンパー糸と、コーン紙の間にも信越シリコーンが確実に入るようにします。また、リード線 の裏側引き出し部分にも信越シリコーンを盛ります。この状態で、半日以上放置します。 (4)フレームにエッジの貼り付け、ターミナルへのハンダ付け ダンパー糸とコーン紙の接着が終わったら、エッジをフレームに貼り付けます。逆ロールエッジにするので、一旦、エッジを押し込み、形を整えながら接着し ていきます。接着が終わったら、フレーム側はピンセットの裏などで押しつけて形を整えます。 エッジのフレームへの接着が終わったら、ボビンとポールピー スの間に入れているスペーサーを外します。 最後に、リード線をターミナルにハンダ付けします。 (5) 振動試験 20Hz~40Hzくらいの信号を入れてボイスコイル・ボビンとポールピースが擦れていないか 確認します。振動系を壊さない範囲で、なるべく大きな信号(1~2W程度以上)をいれると問題点の発見が早いようです。 擦っている場合は、問題箇所を見つけ修正します。ボイスコイル・ボビンの傾きなどは、糸ダンパーを支えているネジのダンパー糸の位置を調整すると直るこ とがあります。 エッジの接着不良、リード線の接触などで、異音が出ることがあります。 どうしても、異音が止まらない場合は、一旦分解してギャップのゴミなどをチェックする必要があります。 (6) センターキャップの取付け 振動試験で問題なければ、センターキャップを接着します。今回は、ボンドSUを使いましたが、DBボンドでもいいと思います。 |
||||
6.インピーダンス特性(2006年10月) ユニット単体のインピーダンスを測定した結果を示します。foは64Hzで、Qoは約0.56です。ダンパー糸を強く張ったことと、振動系が少し重いこ とが影響しているようです。 |
||||
7. 音と反省 高音がだいぶ抑えられ、聞きやすい音になったと思います。 今回は、コーン紙の直径が少し大きくなっていて、エッジの幅が不足気味でした。次回作ることがあれば、コーン紙の直径を5mm程度小さくする必要があり そうです。 |
||||
カスタム検索
|