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FE167E改造「手作りアンプの会」スピーカーユニット2号機の製作
(2007.01) 

 2006年12月の三土会で、会のスピーカーユニット(以下1号機と呼びます)が破損していることが分 かりました。コーン 紙が歪んでしまっているので、振動系を全部交換する必要があります。1号機をそのまま再現してもよかったのですが、評判の悪かった高音のきつさを改善した 方がいいだろうと考え、新しく2号機を製作することにしま した。材料や製作方法などは、大澤式FE-206Σベースの自作スピーカーユニットと 共通の部分がありますので、そちらも参照して下さい。

1. 2号機の製作方針
  1号機は、下の写真のようにボビンが見える状態になっており、高音が強めに再生されやすい構造になっています。また、サブコーンが小さめであり、指向性が 鋭いことも高音がきつくなる要因と考えられます。
 そこで2号機は高音を抑えるため、ボビンと接触しないようにセンターキャップをかぶせ、ボビンから放射される高音が直接正面に出ないようにします。また 指向性を改善するため、サ ブ コーンの先端とコーン紙の先端位置を同になるまで拡大し、且つサブコーンの広がり角度を70°とすることにします。


壊れる前の1号機


2.ユニットの分解とボビンの加工
2.1 ユニットの分解
 まずは、ユニットを分解しました。分解が終わったら磁気ギャップにマスキングテープを貼り、ゴミや鉄粉が入らないようにします。1 号機の作者の大澤さん は、下の写真右のように、コーン紙とボビンを糸で補強していました。今回は、この部分をコーン紙の接着しろで補強することにします。

分解を終えた状況 1号機のボビンとコーン紙の接着状況

2.2 ボビンの加工
 次にボビンを再利用するため、下の写真のようにして接着剤などを剥がします。力を入れて作業するので、ボビンが壊れないように適当な丸棒を芯にします。
 下の写真でボイスコイルの右側が黒く変色していますが、これは磁気回路に入っていた部分です。大澤さんが作ったときに少し沈めていたようで、コーン紙側 に寄っています。 広い会場で使っていたので、かなりパワーが入り、発熱がすごかったことが分かります。 またこの状況から、発熱するのはインピーダンス が大きくなる磁気回路の部分であることが分かります。



 接着剤を取り除いた状態です。ボイスコイルは変色しているものの、変形などはないので このまま再利用します。


2.3 リード線のハンダ付け
 6Nの銅線をボイスコイルの線とハンダ付けしておきます。


3.コーン紙の製作
3.1 採寸とコーン紙の形状決定
 1号機のメインコーンの構造はそのまま継承しますので、寸法を測り、方眼紙に、フレーム各部の寸法、ボビンとコーン紙の接着位置、ギャップ深さ、ボイス コ イルの位置などを実寸で書き入れていきます。次に、 コーン紙の開き角度を分度器で測ります。
 サブコーンは、70°になるように書き込みます。センターキャップは、ボビンから少し浮くように書き込みます。
 


3.2 コーン紙切り抜きと作成
 まず、上の図からコンパスで長さを測り、方眼紙 (採寸図と同じ方眼紙の上の方に描くのが便利)  に下図のように作図します。 切取り角度は、コーンの開き角度をθとすると、下式になります。

  切取り角度=(1-sin(θ/2))×360°



 

 これを、伊勢型紙(渋紙(型地紙)11番)に同じように線引きします。この場合、コーン紙同士の接着しろの線は表面に、他は裏面に線を引きます。こうす ると、コーン紙を接着するときに 半円の曲線を表面に出して接着するこ とができ、仕上がりが綺麗になります。
 作図が終わったら、コンパスの鉛筆部分を針に交換するか 或いはデバイダを使い、メインコーンの折り返し線Cに針で軽く傷を付 けます。
 これが終わったら、円切りカッターで切り抜きます。このとき中心針に強い力が加わるので、伊勢型紙だけだと中心点が広がってしまって円が正 確に切り取りできなくなったり、中心点がずれてしまったりするので、下の写真に示すように両面テープで必要部分を接着した方が安全です。  切り抜きが終わったら、紙を傷つけないように両面テープを静かに剥がします。 接着しろは切り抜きを忘れがちですので注意します。また、刃を入れる 順番を間違えると切り抜きできなくなりますので、後に続く作業を良く考えて切ります。
 サブコーン、センターキャップも同様の作業で切り抜きます。


 切り抜きが終わった状態です。


3.3 ボビンとコーン紙接着部分の加工
 メインコーン紙は、接着しろでボビンと接着しますので、接着しろを作っておきます。


3.4 コーン紙の接着
 コーン紙はボンドSUなどの強力高速硬化型の接着剤で接着します。接着面が動かなくなるまで、指でしっかり固定しま す。接着するまで1分間くらい時間がかかるので、この間、ずれていたら修正が可能です。一旦接着してしまえば、それまでくっついていなかったことが不思議 なくらい剥がれることはなくなります。この手の接着剤は、接着後しばらくベタベタした感じがありますが、1週間くらいすると乾いた感じになります。


4. エッジの作成
 ここでは、楮揉み紙(銀座 伊東屋などで購入可能)を使いました。これだと、柔らかいので手で揉むだけで使えます。)
 まず、エッジの型紙を作ります。採寸図からコンパスで長さを測り採り、厚紙を下図のように切り出します。エッジ部分は、短くしたため14mmとしまし た。


 この型紙を楮手揉み和紙に当て、スリットに沿って折り返し線を書きます。次に、デザインカッターで切り抜きます。紙が動かないよう にうまく押さえて作業する必要があります。切り抜いたら、適当なカッターで三角切り抜き部分を写真のようにカットします。写真右側の、オルファ"別たち" が作業性良好で便利です。
 

 次に、切り抜いた楮揉み紙のエッジを手で丸めながらクシャクシャに揉みます。紙の固い感じがなくなり、皮のよう な感じになったら止めます。これを、コーン紙に貼り付けます。接着剤は、ボンドG17を使います。
 


5.組み立て
(1) ダンパー糸張り
 ダンパー糸は、1号機と同じ位置に張ります。 この作業は組み立てる1日以上前に強めに予備張りしておきます。そして、組み立てるときに、張力を調整し て糸を固定します。


(2) ボビンの位置決め、コーン紙とボビンの接着 及び サブコーンの取付け
  まず、ボビンにコーン紙を嵌め込んでみます。コーン紙がちょっときつく入るくらいが適当です。小さすぎて入らない場合は、接着しろを少しずつ広げます。ボ イスコイルのリード線は、コーン紙の上に出るようにしておきます。

 次に、ボビンを磁気回路のギャップに挿入し、下の写真のようにテレホンカードを幅2~3mmに切ったスペーサーで仮止めします。ボイスコイルがギャップ か ら2mm程度出るようにします。このとき、コーン紙がダンパー糸に僅かに触れ(0.5mm位ならば、離れて いてもOK)、かつダン パー糸がコーン紙に押されることなく真っ直ぐになるようにコーン紙の位置を調 整します。



 以上の作業が終わったら、ボビンの位置がずれていないか、再確認します。OKであれば、まず表側からコーン紙とボビンをエポキシ接着剤 で接着 します。接着剤が固まったらスペーサーを外し、コーン紙とボビンを取り出し、接着しろにエポキシ接着剤を塗り接着します。このとき磁気ギャップには、マス キングテープを貼っておくことを忘れないように。



 次に、ボイスコイルリード線を通す穴をコーン紙に開けます。ダンパー糸と干渉しない位置であれば、どこでもOKです。
その穴に6N銅線を通し、コーン紙上に這わせ、表面にはDBボンド黒を塗って固定します。

 その後、サブコーンを取り付けます。きつければヤスリでサブコーンを軽くけずり、合わせ込みます。サブコーンをセットできたら、DBボンドで接着しま す。


(3)ダンパー糸とコーンの接着、リード線の接着
 ボビン・コーン紙をフレームにセットし、テレホンカードのスペーサーで仮止めします。5(2)と同様に、糸ダン パーコーン紙がダンパー糸に僅かに触れ(0.5mm位ならば、離れていてもOK)、かつダン パー糸がコーン紙に押されることなく真っ直ぐになるように位置を決めます。

 ダンパー糸とコーン紙の接触部分に信越シリコーンを盛ります。ダンパー糸と、コーン紙の間にも信越シリコーンが確実に入るようにします。また、リード線 の裏側引き出し部分にも信越シリコーンを盛ります。この状態で、半日以上放置します。

(4)フレームにエッジの貼り付け、ターミナルへのハンダ付け
 ダンパー糸とコーン紙の接着が終わったら、エッジをフレームに貼り付けます。逆ロールエッジにするので、一旦、エッジを押し込み、形を整えながら接着し ていきます。接着が終わったら、フレーム側はピンセットの裏などで押しつけて形を整えます。 エッジのフレームへの接着が終わったら、ボビンとポールピー スの間に入れているスペーサーを外します。
 最後に、リード線をターミナルにハンダ付けします。

(5) 振動試験
 20Hz~40Hzくらいの信号を入れてボイスコイル・ボビンとポールピースが擦れていないか 確認します。振動系を壊さない範囲で、なるべく大きな信号(1~2W程度以上)をいれると問題点の発見が早いようです。
 擦っている場合は、問題箇所を見つけ修正します。ボイスコイル・ボビンの傾きなどは、糸ダンパーを支えているネジのダンパー糸の位置を調整すると直るこ とがあります。
 エッジの接着不良、リード線の接触などで、異音が出ることがあります。
 どうしても、異音が止まらない場合は、一旦分解してギャップのゴミなどをチェックする必要があります。

(6) センターキャップの取付け
 振動試験で問題なければ、センターキャップを接着します。今回は、ボンドSUを使いましたが、DBボンドでもいいと思います。


6.インピーダンス特性(2006年10月) 
 ユニット単体のインピーダンスを測定した結果を示します。foは64Hzで、Qoは約0.56です。ダンパー糸を強く張ったことと、振動系が少し重いこ とが影響しているようです。




7. 音と反省
 高音がだいぶ抑えられ、聞きやすい音になったと思います。

 今回は、コーン紙の直径が少し大きくなっていて、エッジの幅が不足気味でした。次回作ることがあれば、コーン紙の直径を5mm程度小さくする必要があり そうです。


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