ビクターSX-500の修理・改造
(2008年5月)
メーカ製スピーカーの必要性
普段自作のスピーカーを使っていると、あちこちいじったときに音のバランスがちゃんとしているか不安になるときがあります。このため、メーカー製のスピーカーを1台用意しておこうと考えていました。ついでに、持ち運びができる大きさで、音質的に定評のあるものがいいこことは言うまでもありません。
かといって、高価なものを買うのもばからしいのでヤフオクで手頃なものを探していたら、ビクターのSX-500が目に付きました。値段的に貧乏マニア相応で、ジャンクらしい代物です。
落札して到着したものを見ると、汚れているし、箱は歪みだらけで隙間があいているし、ユニットは埃だらけの状態で、ちゃんと音が出るのか不安になってしまいました。しかし、音出ししてみるとまあまあ、それなりに鳴っているので、早速修理と、例によって改造をすることにしました。
スピーカの状態
写真では分かり難いですが、汚れがこびり付いていました。掃除した後なのでウーハーは綺麗ですが、ツィータの金網の中は埃だらけです。 吸音材は、密閉型にしては少ないように感じました。吸音材の性能がいいのかもしれません。
スピーカターミナルは、外すことができます。ネットワークのコイルは、ケイ素鋼板を使ったタイプです。ウーハー側が6dB/oct、ツィータ側が12dB/octになっています。スピーカユニットは、外の汚れの割に綺麗でした。
アルニコ磁石の防磁型になっていることで、ユニットの重量があり、音質的に有利になっているようです。ツィータはずっしり重量感があり、市販ユニットとしても通用しそうです。
箱の修理
箱の汚れは、ホームセンターで探してみたらリンレイの白木専用洗剤が良さそうだったので、これをキッチンペパータオルに染み込ませて拭いてみました。汚れがばっちり浮き上がってとれます。これで、箱はきれいになりました。
次に、箱の隙間というか割れです。パーティクルボードが収縮したのか、接合部分の一部に隙間ができています。エポキシ接着剤の長時間硬化型で埋めることにしました。今回は、ボンドEセット90分間硬化型を使い、カッターナイフの刃で隙間にエポキシ接着剤を埋めていきました。半日くらいで硬化するので、場所を移しながら埋めていきます。
外部がこれだけ収縮で隙間があるとなると、内側からも接着剤を塗っておいた方がいいだろうと考え、接合部分に木工ボンドを塗っておきました。
ユニットの修理
順番からいくと最後の段階で分かったのですが、左側のツィータが断線寸前でした。修理を終えてターミナルに配線をハンダ付けしたら左側のツィータから音が出なくなって気付きました。ユニットを調べているときから、右側のツィータの直流抵抗が5.3Ωなのに、左側が7Ωくらいあって、気になっていたのですが、ハンダ付けの熱でとどめを刺してしまったようです。
音が出なくなったので思い切って分解してみました。金網ネットを外し、コルクシートを剥がしてネジを外すと、簡単にばらすことができました。振動板の部分は、交換可能になっています。写真のようにリード線が切れていましたので、端子から別の線を出し、ハンダ付けしてみたら導通が回復しました。
組み立てするときは、ボイスコイルがギャップにちゃんと納まるように確認します。軽くネジ止めし、500Hzくらいの信号を入れて擦れた音が出ないことを確認してから、しっかりネジ止めします。もう一度、信号を入れて最終確認してから組み立てました。
ユニットのネジを隠すコルクシートは、ジョイフル本田で1枚21円で買ってきました。両面テープを貼ってからドーナッツ状に切り抜き、貼り付けると修理したようには見えなくなります。
ユニットの修理のため、貼り付けてあったコルクシートを剥がしました。綺麗に剥がしてしまいます。
ユニットを分解し、断線箇所を確認。端子から別のリード線を出し、ハンダ付けで修理できました。
コルクシートを買ってきました。1枚21円の方を使いました。両面テープを貼り付けて切り抜きます。
ユニットに貼り付け、金網カバーを取り付けると修理したようには見えません。
ネットワークの改造
オリジナルのネットワークは、ウーハー側に0.56mHのコイル、ツィータ側に3.9μFバイポーラコンデンサ+0.47μFフィルムコンデンサ(合計の実測値は約4.7μF)と0.33mHのコイルが使われています。
まず、にユニットのインピーダンスを測定し、インピーダンス補正の値を決めます。結果として、ウーハーのインピーダンス補正は5.6Ω+27μF、ツィータは6.8Ω+0.82μFにしました。下図のように、インピーダンス補正後は、インピーダンス上昇が抑えられています。
これに伴い、ネットワークの定数も変更します。オリジナルの特性に合わせるようにした結果、下図のような定数にしました。
コンデンサは、マルコンのポリプロピレンフィルムコンデンサ、コイルはツィータ用はそのまま、ウーハー用はオリジナルのコイルを
巻きほぐして0.36mHにしています。コンデンサは、色々な容量のものをパラにしていますが、これは、オリジナルの特性に合わせるようにして調整した結果です。合計で約5.4μFになりました。シミュレーションでも5.6μF程度の予想でしたので、その通りの結果になりました。
ウーハー用のコイルは、オリジナルを巻きほぐして使用
ウーハ用のインピーダンス補正(左)とツィータ用のインピーダンス補正(右)
オリジナルのネットワーク特性と、改造後のネットワーク特性を下図に示します。見やすくするために、改造後の曲線は-10dB下にずらして示します。 オリジナルだと、ウーハーのインピーダンス上昇により、高周波数側の落ち方が緩やかで、20kHz付近でも-10dB程度にしかなりません。これだと、コイルなしでもいいような気がしてしまいます。右側のツィータのデータとウーハーのデータを見ると、約3kHzで約-5dBあたりでクロスしています(ツィータの左側は、断線前の直流抵抗が7Ω近くあった時のデータなので無視して下さい)。
改造後ですが、同様の特性になるようにしました。インピーダンス変化を抑えたため、ウーハーの1~2kHzあたりはオリジナルよりも再生レベルが上がりますが、聴感上はむしろ抑え気味に聞こえます。
吸音材の追加
オリジナルの吸音材はかなり少ないような気がするので、ニードルフェルトを内面に貼り付けました。改造前後の比較は、時間が空きすぎているので難しいのですが、改造前な60Hzから低周波数側へ急激にレベルが低下していたのが、改造後は60Hzあたりからの落ち方がなだらかになったような気がします。
インピーダンス特性
改造後のインピーダンス特性を下図に示します。左側のツィータは、修理後のものです。ウーハーのf0は、裸の時が約50Hz、箱に入れた時が70~80Hzです。聴感上の低音再生と大体合っている感じです。
音
オリジナルと改造後は時間が空きすぎていて比較が難しいのですが、大人しい音であることに変わりはないようです。SX-500の素性の良さが出ているのではないでしょうか。しかし、ネットワークの改造とインピーダンス補正の効果か、改造後は高音が伸びたように感じます。
低音は、60Hzあたりまでフラットに聞こえます。オリジナルだと、それより下の帯域は急激に落ちていました。 しかし、吸音材を追加したせいか、落ち方が緩やかになった感じで、レベルは下がりますが55Hzあたりまでは再生できているようです。
現在使用中のバックロードホーンD-50改+リボンツィータPT-R7Zと高音、低音のバランス的な差はあまり感じません。低音の質感はバックロードとの違いがあり、またD-50改の方がより低い音まで再生できているのでSX-500の方が少し苦戦していますが、箱の大きさを考えるとまともに再生していると思います。高域側はリボンツィータとの比較になるため、SX-500の方が不利で分解能が落ちますが、これも基本的な性能の違いが現れていると思います。全体とすれば、音質的には同じ傾向でしょう。D-50の改造が変な方向に進んでいないことを確認できたと思います。
しかし、SX-500だと横方向の広がり感がかなりあるのに対し、D-50改+PT-R7Zだと横方向の広がりが少なくなります。このあたりがバックロードホーンとの違いかもしれません。
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