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長岡D-50バックロードホーンはFE-206Σ程度の磁力のユニットで使うようになっており、FE-206S以降の強力タイプでは低音が不足します。
FE-206Σでもソースによっては低音の量感が不足するため、D-55或いはD-58ESあたりの箱に吸音材を入れて使いたくなります。 市販のユニッ
トを使っていると、これがあたりまえのことと考えていましたし、他の方法があるなんて考えもしませんでした。 ところが、FE-206Sを改造した大澤さんのユニットを使う機会があったとき、この概念がひっくり返りました。ダンパーもエッジもオリジナルよりも抑 制力が弱くなっており、ましてFE-206Sの磁力ですからさぞかしハイ上がりな音が出るかと思ったら・・・・・。逆にFE-206Σを使った時よりも低 音が豊です。 このことがあってから、大澤式のユニットを使うようになりました。 D-50バックロードホーンでも低音不足を感じることが無くなりましたので、これからも長く使うことになりそうです。 |
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さて、手作りオーディオアンプの会で「自
作スピーカーの会」が
ありました。ジャンクで手に入れたFW-200があったので、これを持ち込んで大澤式のユニットを作ってみることにしました。 実際にやってみると、ス
ピーカーユニットの自作は意外と簡単ですので、製作方法を紹介します。 なお実際の製作順番は、問題のない範囲内で適宜変えています。
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(長いので)目次らしきもの
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1.ユニットの分解 (1) 振動系の取り外し 当然のことながらスピーカーユニットのうち、残すものはフレームとボイスコイル(+ボビン)です。 (オリジナルのコーン紙とボイスコイルを生かす場合は、コーン紙を傷つけないように分解します。) ま ず、端子から出ている錦糸線(端子と振動系を結んでいるを)をハンダごてで外します。次に、エッジとダンパーを切って外します。エッジはハサミなどで簡単 に切ることができます。ダンパーはフレームの間から切ることになるので、デザインカッターを使うのが便利です。このときダンパーを少し切ってボイスコイル を見えるようにし、ボイスコ イルの状態(ギャップからどの位出ているか、或いはギャップに丁度入っているかなど)を確認しておきます。また、ボイスコイルを傷つけないように外周側を 切ります。 (2) ギャップの保護と掃除 振動系を取り外したら、すぐにギャップにマスキングテープを貼ります。ギャップに鉄粉が入ったら、取り除くのに苦労します。下手すると、使い物にならなく なることがあります。 続いてフレームに残っているダンパー、エッジ、古い接着剤などを取り除きます。 (3) ボビンの古い接着剤除去 ボビンを再利用できるようにコーン紙、古い接着剤を除去します。この作業ではボビンにかなり力を加えますので、ボビンを保持するための治具が必須です。適当なものを探して、ビニルテープなどを巻いて 利用します。ここでは、湯飲み茶碗を使っています。 ボイスコイルから出ている錦糸線は切取りますが、他の線は切らないよう作業します。これが面倒ならば、線を切ってしまい、古い接着剤、テープなどの除去 が終わってからボイスコイルを1ターン巻き戻して配線に使います。 古い接着剤は、ニッパなどで取り外せるものを除いた後、デザインカッターなどを用いて、ボビンに刃を当てないように気を付けながら少しずつ取り除いて行 きます。 今回は古い接着剤の下にある紙テープも除去しましたが、そのまま残しても問題ないようです。 除去終了後の状態です。リード線は、コーン接着位置よりも上に延ばしておきます。 |
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2.採寸と型紙の作成 2.1 採寸とコーン紙の形状決定 方眼紙を用意します。方眼紙の下の方 (上にはコーン紙等を描くため) に、フレーム各部の寸法、ボビンとコーン紙の接着位置、ギャップ深さ、ボイスコ イルの位置などを実寸で書き入れていきます。(下の図でボイスコイルが長く なっていますが、これはFW-200がロングボイスコイルのためです。) コーン紙は、開口部(CE間)の長さを決め、C及びE点がフレームのエッジ取付け面に合うようにしてボビンのコーン紙取付け位置に線を引き、形を決めま す。次に、 コーン紙の開き角度を分度器で測ります。 センターキャップは、ボイスコイルの先端に接触し かつ適当な角度になるように決めて線を引き、形を決めます。 これも、開 き角度を分度器で測ります。 2.2 型紙作成 (1) ダンパー糸止めネジのタップ位置決め用型紙 大澤式ユニットでは糸ダンパーを使いますが、糸ダンパーを支える3本のネジの位置はかなり正確である必要があります。まず上の図面からコンパスでネジ取 付け部の外周側の長さを測り、工作用 紙に外周、ネジ位置、内周の円を描きます。これに分度器で120°の角度を決め、直線を書き込みます。 次に、外周を円切りカッターで切り抜きます。 切り抜いた型紙をネジを取り 付ける面に入れてみて、丁度入る大きさであることを確認します。 隙間がある場合は、型紙を中央に固定してポンチを打ってもいいですが、どうしても位置が ずれます。作り直す 方が無難です。 なお、タップを立てる位置は、ナットを回した時にフレームにぶつからないようにするため、少し中央寄りにします。 (2) エッジ作成用型紙 エッジは、いわゆるエッジ部分の他に 下図のようにコーン紙側とフレーム側に接着する部分があります。まず、コーン紙に接着するのは、三角の切り込み(5(5)に図示)を入れて接着する部分(採寸図の、C点からA 点側に5mm)と、C- D間(5mm)の両方で併せて10mm、いわゆるエッジの部分は適当に見当をつけて18mm、フレームに接着する部分は6mmとなり、エッジとして使用す る紙の幅は 合計で34mmとなります。 工作用紙に、採寸図のA-C間の長さから5mm引いた半径の円、半径がA-C間の長さの円、半径がA-C間の長さ+29mm(=6+5+18mm)の円 を下図のように描きます。 次に、下図のように半径がA-C間の長さの円に1mmの幅のスリットを作ります。これは、折り返し位置Cの線を書込み、その内側に三角形の切り欠きを作 るために必要となります。 そして、外側、内側の順に円切りカッターで切り抜きます。 |
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切り抜くと、こんな感じになります。 |
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3.コーン紙とエッジの作成 3.1 コーン紙切り抜きと作成 まず、採寸図からコンパスで長さを測り、方眼紙 (採寸図と同じ方眼紙の上の方に描くのが便利) に下図のように作図します。ボビンとの接着線は、B点になりますが、接着しろ(4mm)を付けることにしましたので、そ の分、内側に円を描きます。ボビンとの接着線B、コーン紙の折り返し線C、曲線I(直径がA-D間の半円)、接着しろな ども忘れないように描きます。 切取り角度は、コーンの角度をθとすると、下式になります。 切取り角度=(1-sin(θ/2))×360° これを、伊勢型紙(渋紙(型地紙)11番)に同じように作図します。この場合、コーン紙同士の接着しろの線は表面に 作図し、他は裏面に作図します。こうすると、コーン紙を接着するときに下図の 曲線I を表面に出して接着するこ とができ、仕上がりが綺麗になります。 作図が終わったら、コンパスの鉛筆部分を針に交換するか 或いはデバイダを使い、裏面の折り返し線Cに針で軽く傷を付 けます。 これが終わったら、円切りカッターで切り抜きます。接着しろは忘れがちですので注意します。また、刃を入れる 順番を間違えると切り抜きできなくなりますので、後に続く作業を良く考えて切ります。 センターキャップも同様の作業で切り出します。 切り抜いた後のコーン紙です。不思議な形です。これがコーン紙やキャップになるとは想像できない・・ コーン紙はセメダインスーパーX2、ボンドSUなどの強力高速硬化型の接着剤で接着します。接着面が動かなくなるまで、指でしっかり固定しま す。 セメダインC も使えますが、乾燥が早いので慣れていないと寸法が違ったり、接着不良になりがちです。何度か練習してから接着します。 接着が終わったら、エッジに近い折り返し部分を右の写真のように折ります。デバイダの針で傷を付けてあるので、簡単に作業できます。 3.2 エッジの作成 今回は黒谷生漉き和紙4匁を使いました。(銀座伊東屋で売っている楮揉み紙だと、柔らかいので手で揉むだけで使えます。) まず、一旦くしゃくしゃにしてから広げ、型紙を当ててスリットに沿って折り返し線を書きます。次に、デザインカッターで切り抜きます。紙が動かないよう にうまく押さえて作業する必要があります。 切り抜いたエッジです。このままだと紙の腰が強くて、エッジから音が出てしまうため使えません。板の上で、揉みながら金槌で叩いて柔らかくします。初め の固い感じがなくなってきたら止めます。 (銀座伊東屋で売っている楮揉み紙だと、この作業は不要です。) 柔らかくした紙をほぐします。このとき、ごわごわする所があるので、揉みほぐしながら広げます。次に、書き込んだ折り返し線の内側を写真のように三角の切 り込みを入れて行きます。今回はデザインカッターを使いましたが、ちょっと疲れます。スクレーパーやオルファのテクニックナイフが便利だそうです。 |
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4.フレームの加工 4.1 ネジ穴の作成 ダンパー糸を止めるためのネジ穴を作ります。 まず、前述の2.2(1)で作った型紙をユニットに嵌め込み、ポ ンチを打ちます。このとき、スピーカー端子と重なる位置にネジ穴を開けないように注意します。(4.2の写真参照) 次に孔あけですが、3mmのネジ穴だと2.5mmのドリルで孔あけをしてからタップを立てます。この孔あけは精度が必要ですので、ボール盤を使うのがベ ス トです。ハンドドリルを使う場合は、孔あけしてタップを立てた後に穴の位置を確認し、ずれていたらネジを少し曲げて修正します。 (重要)孔あけの時出てくる切削屑は、必ず掃除機或いはガムテープできれいに除 きます。特に 鉄フレームのスピーカーは、慎重に掃除します。 以降の作業でマスキングテープを剥がすときは、ギャップのあたりに鉄粉が集まっていますので、その上に更 にマスキングテープを貼るなどして剥がし、ギャップに吸い込まれないようにします。 (適当な写真がなかったので、製
作会の写真を使っています)
4.2 ネジの取付け ネジは、長いものを15mmくらいに切ってネジ穴にねじ込み、ナットで固定します。糸の位置を固定するナットも2個付けます。 FW-200のフレームは大きいので、糸を止めるためのネジも付けることができます。写真のようにフレームの横に2個付けました。こうしておけば、ダン パー糸の調整が楽になります。 |
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5.組み立て (1) ダンパー糸張り ダンパー糸は、太さ約0.8mmの綿コード(コットンコード)を使います。ワックスを塗ってあるものです。蒲田のユザワヤ10号館3階で買いました。 ナットの位置(フレームからの高さ)を合わせておいて、下の写真のように張ります。強めに張って、一日くらい放置します。 (2) コーン紙とボビンの接着 コーン紙とボビンを曲がらないように接着できるのであれば問題ないのですが、普通は少し曲がります。極 端な場合は、コーン紙が傾いた状態でユニットができあがってしまいます。 これを防ぐため、下の写真のよ うにボビンをスペーサー(テレホンカードなどを切ったものが便利です)でギャップに仮止めし、コーン紙 を載せて接着位置になるようにボビンを動かし、エポキシ樹脂などで接着するようにします。瞬間接着剤で固 定し、ボビンとコーン紙を取り外してからエポキシ接着剤で接着すると作業が楽だし、接着も上手く行きま す。(終わったらすぐにギャップにマスキングテープを貼るのを忘れないようにします。) コーン紙とボビンの接着しろは、カッターナイフで適当な幅の切り込みを入れ、外側に折っておきます。ボ ビンにギチギチでもなく、緩くもなく簡単に入るように調整しておきます。 (重要) 予め、キャップとコーン紙とボビンを合わせてみて、コーン紙の接着位 置を確認しておきます。意外と採寸図からずれていることがあります。 (重要) ダンパー糸とぶつからない位置に、リード線引出し孔をを決めます。 (重要) この作業が終わったら、ギャップにマスキングテープを貼ること を忘れないで下さい。 (適当な写真がなかったので、製作会の例を使っています) このとき、ボイスコイルのリード線は、コーン紙の表側に引き出してから接着します。 (3) リード線の取付け コーン紙のリード線引出し位置に孔を開け、6N銅線を通します。ボイスコイルの線は、デザインカッターなどで被服を除き、6N銅線とハンダ付けします。 ハンダ付けが終わったら、表側は黒のDBボンドなどで固定します。裏側は振動で線が折れやすいので、信越シリコーンなどの柔らかいゴム状の接着剤で固定 します。 (重要) 信越シリコーンを塗った場所は、他の接着剤が使えません。信越シリコーンを使うのは最終工程にした方が無難です。 (4) キャップの取付け ボビンは薄いので、そのままキャップと接着しても強度が不足することが考えられます。そこで、接着部分に凧糸を入れることにしました。 まず、凧糸でボビンより若干小さな輪を作りボビンに嵌め込みます。瞬間接着剤で、ボビンの上端ギリギリの適当な位置に凧糸を固定します。結び目は、瞬間 接着剤で固定したあと、はみ出している部分をニッパで切り取ります。 次に、エポキシ接着剤を凧糸全体と、ボビンに十分塗り、キャップをかぶせます。裏側から見て、接着剤がボビンの縁全体に行き渡っていることを確認したら そのまま固定し、固まるまで待ちます。 エポキシ接着剤が固まったら、コーン紙とキャップをDBボンドで接着します。(写真は量が多すぎた失敗例です、と言ってもこれしかないが) (5) エッジの貼付け 3.2で作ったエッジをコーン紙に貼り付けます。ボンドG17をコーン紙に付け、爪楊枝で均一に延ばしてから先の 尖った ピンセットで貼り付けて行きます。ピンセットで貼り付けたら、ピンセットの裏側或いは指でエッジとコーン紙を押しつけます。乾かないうちだと少し修正でき るので、5cm位ずつ作業していくと失敗しにくいようです。 (6) 振動系の取付け ダンパー糸を張ったままで、ボイスコイルとコーン紙の振動系をフレームに載せてみます。このとき、軽く載せる程度にします。 もちろん、ギャップのマス キングテープは剥がしておきます。 ボイスコイルが設定位置からずれていたら、ダンパー糸を緩めてナットを回し、 ダンパー糸の位置を調整します。再びダンパー糸を張り、ボイスコイルの位置を確認します。ボイスコイルが、所定の位置に納まるまで調整します。 位置が決まったらギャップにマスキングテープを張り、ダンパー糸の張力を所定の範囲になるようにします。ダンパー糸の張力は基準とするものを作ってお き、それに合わせるようにすると、設定 が簡単です。バネ秤で引っ張ってみた感覚だと、500g~1kg程度が適当のようです。 張り終わったら、ナットを適当な間隔(糸ダンパーが上下に動かな い程度)にして、上側のナットに接着剤を塗っておきます。 次にギャップのマスキングテープは剥がし、写真のように使用済テレホンカードを切ったスペーサーをギャップに入れ、その上か らボイスコイルを嵌め込みます。コーン紙とダンパー糸は僅かに接触する程度の位置に固定します。ダンパー 糸がコーン紙に押されて曲がっている状態だと、接着後にスペーサーを抜くとボイスコイルがギャップに接触することがあります。 |
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ダンパー糸とコーン紙の接触部分に信越シリコーンを盛ります。この状態で、半日以上放置します。 ダンパー糸とコーン紙の接着剤が固化したら、コーン紙を上下に真っ直ぐ(斜めに動かす と当然ぶつかります)動かしてみて、ボイスコイルが接触していないことを確認します。もし接触しているようであれば、 ダンパー糸を外して信越シリコーンを取り除き、(6)のダンパー糸の張力調整からやり直します。信越シリコーンはゴム状に固まるので、ピンセット、デザインカッターなどを使って取り除くことが容易です。コーン紙を痛めることも少ないので便利です。 ボイスコイルの位置が大丈夫であれば、フレームにボンドG17を塗り、エッジを貼り付けます。いわゆるエッジ部分が、綺 麗なロール状になるようにフレームに貼り付ける部分を調整しながら貼り付けていきます。貼り終わったら、フレームの貼 付けが終わった部分の上にもう一度薄くボンドG17を塗り、ゴムリングを接着します。 エッジの貼付けが終わったら、スペーサーを抜き取ります。
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最後にターミナルに線をハンダ付けします。 |
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6.インピーダンス特性 できあがったユニットのインピーダンス特性を測ってみました。スピーカーと直列に41Ωの抵抗を入れ、発振器はOCR11、ミリバルはLMV- 181A、周波数カウンタは秋月4・1/2桁キットを使って測定しました。 f0は22.4Hz、その時のインピーダンスは約650Ωです。 |
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道具、材料など 道具 はさみ、ニッパ、直定規30cm、ステンレス直定規15cm、コンパス、デバイダ、円分度器、方眼紙(B4或いはA3サイズ)、工作用紙(A3サイズ)、 ハンダごて、ハンダ、ハンダ吸い取り線、先の尖ったピンセット(エッジ接着用)、カッターマット(A3サイズ)、使用済テレホンカード、カッター、円切り カッター小(ここではNTカッターC-600GPを使用)、円切りカッター大(ここでは、オルファ円切りカッターL型を使用)、マスキングテープ、鉛筆、 消しゴム、ボール盤(なければハンドドリルを使うことになるが、孔あけ精度が出るように注意)、2.5mmドリル、3mmタップ、タップ回し或いは充電ド リル 材料 伊勢型紙 渋紙(型地紙)11番 黒谷生漉き和紙4匁(銀座伊東屋で購入、楮揉み紙でもよい) 約0.8mmワックス綿コード(蒲田ユザワヤ10号館3Fで購入) 6N銅線(オヤイデ電気で売っているアクロテックの6Nコードの心線を利用) 3mmネジ3本とナット9個 (必要なら凧糸) 接着剤 エポキシ接着剤(10分間硬化型が使いやすい): ボビンとコーン紙、センターキャップの接着 セメダインスーパーX2或いはボンドSU (セメダインCでもOK): コーン紙接着 DBボンド(ヒノオーディオで入手可能): コーン紙とキャップの接着、リード線の接着(コーン紙表側) 信越シリコーン: リード線の接着(コーン紙裏側)、ダンパー糸とコーン紙の接着 ボンドG17: エッジの接着 その他: 瞬間接着剤 |
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