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上野氏設計24bit 74AC574 4パラR-2RディスクリートDACの製作 2007.1.11
(2007.7.20 ローパスフィルター、ヘッドホンアンプを追加)

1.上野氏設計24bit DAC基板
2.ロジックICの出力インピーダンスと端子間の干渉
3.抵抗の選別
4.製作と調整
5.ローパスフィルター、ヘッドホンアンプ
6.音

1.上野氏設計24bit DAC基板
 R-2RディスクリートDACの24bit版は以前から話題になっていたのですが、上野さんが基板を起こす気がなかったことと、自分でユニバーサル基板 を使って組むのはちょっと面倒なので、なかなか手がつかないままになっていました。
 しかし2006年夏頃、ディスクリートDACのロジックICをパラにして、出力インピーダンスの問題を軽減する試みを行っているころから、上野さんが 24bit基板製作の話に乗り気になり、事が動き始めてから2ヶ月くらいで基板が完成しました。

 基板の詳細は、下記URLの上野さんのサイトにあります。DAI基板は、CS8416をマイコンで制御するソフトウェアモードで動かしていて、8入力切 替が可能です。DAC基板は左右1枚ずつに分かれているのと、デジタル部とアナログ部で別の電源を使えるようになっています。
http://www2p.biglobe.ne.jp/~t_ueno/DAC/CS8416_DAC/
http://www2p.biglobe.ne.jp/~t_ueno/DAC/74AC574_4para_DAC/

石田さんもこの基板でDACを作っていて、そのレポートも上野さんのサイトにあります。
http://www2p.biglobe.ne.jp/~t_ueno/DAC/CS8416_DAI_74AC574_4para_DAC/24bit_R-2R_DAC_report_ishida.pdf

2.ロジックICの出力インピーダンスと端子間の干渉
2.1 出力インピーダンス
 ロジックICの出力インピーダンスについては、手作りアンプ の会の会員である前田さんが色々測定しています。これまで多用していた74HC574と類似の74HC374と、今回使用している74AC574 を 比較した図を下に示しますが、74AC574の出力インピーダンスがかなり低いことが分かります。
  74AC574を4パラにした場合は、電源電圧が5Vのとき、High側で約2.9Ω、Low側で約2Ωとなります。



2.2 各端子間の干渉
 また前田さんは、IC内部の配線による各端子間の影響も調べています。以下の前田さんの測定結果と説明から分かるように、74AC574は内部配線の影 響が小さく、4 パラにすればその影響は0.1Ω程度に納まりそうです。
 つまり、74AC574を使えば、各端子間の影響は小さく、出力インピーダンスだけを考えても問題はないと言えます。

前田さんの説明から
HC374の図の紺色の線の説明をします。
 (1)の点はQ0だけに電流を流して内部抵抗を測定した結果です。他のpinはopenです。
 (2)の点は(1)の測定中にQ1(だけ)に同じ電流を追加した時のQ0の内部抵抗です。
 (3)は同様にQ2だけに同じ電流を追加したときのQ0の内部抵抗です。
以下同じ。 ピンクがQ1,黄緑がQ2,以下一番抵抗値の小さいところが基準です。






3.抵抗の選別
 74AC574を4パラにすると、High側で約2.9Ω、Low側で約2Ωですから、2R部の抵抗を2.5Ω程度小さく すれば、誤差±0.5Ω程度に納めることができます。但し、今回は勘違いしていて、High側の値しか頭になかったため、3Ω小さな値にしてしまい ました。
 抵抗の選別は、CDプレーヤーの製作記事で用いた方法だと 精度が若干不足するので、YOKOGAWAの7561型マルチメータを使用しました。しかし、抵抗の数が 多いので4端子法ではなく2端子法で選別しています。
 抵抗は、千石電商の100本300円抵抗(F級)を使いました。今まで買ってあったもので、1.8kΩと3.6kΩを 各々 400本程度から選別しましたが、今回測定した抵抗は、1%誤差の範囲内にばらついていました。
 24bitDACですから、1.8kΩとその倍の値から3Ω(本当は、2.5Ωの方が好ましい)小さい3.6kΩの 組合わせが24本ずつ必要です。抵抗のバラツキの分布が合っていなかったので、互いに一番数の多い所 では組合わせが作れなくて、結局、ステレオ3セット分をなんとか選別できました。
(なお、一番下位の2Rは、1.8kΩの倍の値を使います。)
選別の効率を上げる方法
(1)2R部の抵抗を直列にする。
 2種類の抵抗を選別しようとすると、分布の違いからRと2R-3Ω(本当は、2.5Ωの方が好ましい) の組合わせがうまく取れないことがあります。選別の効率を上げて安く済ますには、前述 の石田さんのように1種類の抵抗だけを買って、2R部は2本直列にするのがよさそうです。 このようにすれば、R部に合わせて2R-3Ωの抵抗を作ることができるので、利用効率がかなり 高まるはずです。
(2)R部の抵抗を並列にする。
 1/6Wなどの小さなサイズの抵抗を利用できる場合は、R部の抵抗を2Rの並列にする方法でも 利用効率を上げることができます。上野さんの基板が、1/4W用 に作ってあるので、1/6Wの抵抗だとパラにしても装着できます。
 並列にした場合の抵抗の選別ですが、例えば3.6kΩから1.8kΩを作る場合、 3.6kΩ+30Ωと 3.6kΩ-30Ωを並列にすると1.79988Ωとなり、1.8kΩから0.12Ωしかず れません。つまり、目的の値から同じだけ大きい値と同じだけ小さい値の抵抗を組み合わせて 使えば問題ないことになります。

4.製作と調整
(1)部品
 上野さんのサイトの回路図から、必要な部品を読み取ります。ATtiny26Lは、上野さんが プログラムを公開しているようですのでそれを焼く必要があります。私は、 上野さんが焼いたものを分けてもらいました。

(2)電源
 R-2RディスクリートDACは、電源によってかなり音が変わります。私の好みは、うるさくなく、 分解能の高く、奥行き感のある音ですが、三端子レギュレータだけだと音が硬 く、分解能が低く、奥行き感がなくなってしまいます。このため前回の16bit版のDACでは、 5V5Wのツェナーダイオードを使ったシャントレギュレータを使っていました。
 しかし、ツェナーダイオードのバラツキがあるので選別が必要だったり、電源の発熱が大きい という問題があります。そこで、三端子レギュレータの後ろに抵抗と大容量コンデンサを入れ、 ノイズを低減するようにしてみたところ、ツェナーダイオードを使ったシャントレギュレータと ほぼ同じ音になることが分かりました。コンデンサは、下図DAC用電源に示すように、2200μFを 2個使います。
 ところが、この容量だとDAIがうまく立ち上がりません。三端子レギュレータだけだと問題なく 立ち上がるので、コンデンサの容量が大きすぎるようです。DAIは三端子レギュレータだけにする ことも考えたのですが、こうすると、三端子レギュレータの音に出てきて、少しうるさく、荒れた 音になってしまいます。DAIとDACは、 アースと信号ラインがつながっているだけなのですが、ノイズによる影響が出るようです。 このため、コンデンサの容量を減らしてDAIが立ち上がる容量を調べた結果、 2200μFを1個だけにすると問題なく立ち上がることが分かりました。
 以上の結果から、電源は下記のような回路になっています。






(3)セレクタ
 DAI基板にはセレクタ用の端子があって、8chの切替ができるようになっています。上野さんの回路例では10kΩを使っていますが、ちょっと抵抗値が 大きいような気がしたので1.8kΩに変更し、ノイズ低減用のコンデンサを入れてみました。これは気分の問題なので、上野さんの回路でも問題ないはずで す。



(4)デジタル入力部
 1ch~4chは同軸入力としました。接続されるデジタル機器とアースを分離するために、 パルストランスを使います。1chは波形成型回路を使い、電源も電源の干渉を除くため、 電源トランスを含めて完全に独立させた専用のものを使います。定電圧回路は、DAC電源と 同じです。2ch~4chはパルストランスだけを使っています。



 5~8chは、光入力です。ここもアースの干渉を防ぐため、光受信モジュール(TORX179)で 受けたあとに波形成型してパルストランスでDAIへ出力しています。電源は、5~6ch用 と、7~8ch用に、電源トランスも含めて完全に独立させています。定電圧回路は、DAC用 と同じ回路です。



(5)MSBの抵抗と調整
 MSBは、半固定抵抗で微少調整を行いますが、半固定抵抗とパラに小さな値の抵抗を入れると調整後のノイズが小さくなるような感じがあります。ここで は、10Ωを入れましたが、半固定抵抗の調整可能な範囲でなるべく小さな値の抵抗を使うと良好な結果が得られると思われます。


 調整後のMSBの抵抗値ですが、勘違いで2R部の抵抗を2.5Ω小さな値にすべきところを3Ω小さくしたため、MSB部の2Rの値が少し大きめになるは ずです。実測値も、2R-3Ωよりも1~2Ω程度大きな値となっており、ほぼ理論通りの動作をしていることが分かります。



(6)ケース加工と部品の取付け
 ケースは、DACの他にアナログフィルターとヘッドホンアンプを入れる予定なので、少し大きめのものを使いました。


動作確認の状況


DAC部分完成

(7)I/V変換抵抗と出力用カップリングコンデンサ
 上野さんの回路図にあるI/V変換用の抵抗R25ですが、荒木さん、上野さんの検討結果で、無くても問題 ないということになりましたのでここでは入れていません。その代わり出力のカップリングコンデンサ の後ろに、直流電圧出力防止用に10kΩを入れました。
 また出力カップリングコンデンサのCC1、C13ですが、今回のDACは分解能が非常に高くなっている せいか、普通のケミコンとOSコン、それにフィルムコンデンサを較べてみると差がかなり大きく出ます。 前述のように電源が通常の三端子レギュレータではないため、うるささが抑えられた音になっている 関係で普通のケミコンだとぼける感じが強調されます。しかし、OSコンはリーク電流の点でカップリン グコンデンサに向かないので、ここでは2.2μFのフィルムコンデンサを3個パラにし、6.6μFのコンデン サとして入れています。


5.ローパスフィルター、ヘッドホンアンプ
 CDプレーヤーの製作でもローパスフィルターについて書きました。今回 は、手持ちの部品の関係で、定数を変更してみたところ、前回よりも肩特性の良好なフィルターになりました。
 回路図を以下に示しますが、ツィンTフィルターとCRフィルターを組み合わせた構成にしています。但し、ツィンTフィルタのノッ チ周波数における減衰特性は必要ないので、ダンプ抵抗を入れて最大減衰特性を弱めてあります。 バッファは、FETの2SK364/2SJ104を使った コンプリのソースフォロワです。gmが比較的大きいので出力インピーダンスが低く、バイアス回 路が必要ないので便利です。
 このローパスフィルターの前にあるR-2R DACの出力は、約2.5Vのバイアス電圧が加わっています。ローパスフィルターはその電圧をそのまま受け て、2.5Vのバイアス電圧 が 掛かった状態で動作させ、最後に4.7μFのカップリングコンデンサで直流をカットしています。 コンデンサに常に電圧がかかるようにした方が音質的に有 利かなと考えただけですが、効果は確認していません。



 ヘッドホンアンプの回路図を以下に示します。ローパスフィルタの出力をコンデンサで直流カットした後、10kΩのボリュームで受けて、ダイ ヤモンドバッファで出力するだけの構成です。 ヘッドホンの電力は微小であるため、これでも全く問題ありません。
 設計段階では電圧増幅段を入れるかどうか迷っていましたが、R-2R DACの出力電圧がフルビット で約1.7Vrmsありますので、たぶん大丈夫だろうということで試しにダイヤモンドバッファだけにしてみたものです。 だめなら、作り直せば済む話だ し・・・・・・・・・・。 結果は、オーディオテクニカの ATH-A9xだと ボリューム位置が10時くらいで煩いくらいの音量になっています。 高インピーダンスのヘッドホンでも、たぶん大丈夫でしょう。
 構成がバイポーラトランジスタのダイヤモンドバッファですから、ベース電流が流れます。入力の接地抵抗とボリュームに電流を流さないようにするために は、2SC1815/2SA1015のベース電流を同じにする必要があります。このため、入力段のコンプリトランジスタのhfeは揃っていることが望まし いで す。hfeが大きくずれているとベースの接地抵抗とボリュームに流れるベース電流が増え、ボリューム位置を変えると直流電圧がかなり出てしまいま す・・・・・・・、が・・・・
 しかしベース接地抵抗を小さな値にしておけば、この問題は軽減されるので、今 回は接地抵抗を4.7kΩと小さな値にして、秋月の2SA1015/2SC1815GRランクを無選別で使ってみました。
 結果は、左右の出力ともボリュームの位置を変えても1mV程度の変動が出る程度で、問題はありませんでした。しかし、完全を期す場合は、動作電流におけ るhfeの揃ったものを使うのが無難でしょう。



 電源はDACなどと同様の構成で、三端子レギュレータの後にCRフィルタを入れたものです。



 プリント基板は、「手作りアンプの会」で講習会があったEAGLEでパターンを作ってみました。以前に手書きで 作ったパターンを参考にしながら部品を並べてみて、なんとか作り上げることができました。上下が対称になっていない場所があるのは、途中で作業が面倒に なったからです。 しかし、プリント基板の表裏を考える必要がないし、その分ミスが少なくなるので、使い慣れると便利だなと思いました。



 パターンができたらOHPシートに印刷して、感光基板の露光です。蛍光灯は、三灯式のものを新調しました。



 感光、レジスト除去の現像、エッチング、穴あけ、カットを終えた基板です。今回は、100mm×150mmの感光基板から100mm×75mmの基板を 2枚作りました。



 部品を載せている途中の基板です。



 ライン出力用の4.7μFを載せたところです。



 さて、組みあがった基板のフィルタ特性を測定してみました。シミュレーションした時よりも高域側の減衰が大きくなっており、20kHzで-4dB、 40kHzで-12dB程度と、予想よりも1dBほど減衰しています。
 CDプレーヤに搭載したローパスフィルタよりも減衰がシャープになって いますが、このローパスフィルタによる音質の変化は小さく、スピーカーで聞いてい ると違いが分かりにくいようです。実際に三土会や、九州支部の試聴会で皆さんに聞き比べてもらいましたが、違いがほとんど分からないという意見が多かった ようです。部屋や、使っ たスピーカーのせいもあったと思いますが、音質の変化が小さなフィルターになっているようです。

 

 ローパスフィルターと、ヘッドホンアンプ部を組み込み、完成したDACです。




6.
 16bit版のR-2RDACに較べて、分解能が非常に高くなっています。DAC基板電源部が 非常に強力になっているのが効いているような気がします。
 このDACを使い始めてから、いままで、エコーだと思っていた音が実は演奏であることに 気がついたり、新たな発見をしています。  石 田さんの製作記事にもあるようにかなり 音が良好ですので、是非製作されることをお勧めします。
 また、ローパスフィルターは音質変化が小さいながらも20kHz以上の減衰特性が良好であり、通常の使用に十分耐えられるものになっていると思います。 また、他の人に聞いてもらうとか、高価なツィータを使っているスピーカーを鳴らすような場合にも有効であると思われます。


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