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SEA-100グラフィックイコライザの改造(2005年10月)

1.オリジナルの回路
2.改造の方針
 (1)イコライザ回路
 (2)バッファアンプ
 (3)電源
3.製作
4.特性と音

 グラフィックイコライザ(グライコ)というとイコライジング無しでも音が変わってしまい、オーディオ用としては使いにくいものが多いと 思います。私の周りを見ても、デジタルで処理している場合は別として、グラフィックイコライザを使っている人はいないようです。 しかし、部屋の影響によ る音のこもりを小さくしたり、低音の出ないスピーカーをなんとかしたいという場合には魅力的に映る装置でもあります。

 かなり昔(25年位前か)に友人からビクター(VICTOR)のSEA-100(下の写真)を譲ってもらったことがあるのですが、これはイコライジング無しであまり音が変わらないアンプ です。 SEAとはSound Effect Amplifierの略のようです。 回路を調べてみると、イコライザ部分はトランジスタ1石の簡単なもので、インダクターもコイルを使った古いタイプのものです。 歪率特性も良くないようですが、音質的な面では十分実用になります。  これを改造(考え方は今回の改造をほぼ同じ)して使っていたのですが、会社勤めをするようになってから後輩に譲ってしまいました。
 オーディオに出戻りしても、このことを忘れていたの ですが、オークションに出品されているのを見つけて衝動的に落札してしまいました。 



 落札したSEA-100ですが、スイッチを入れてみると問題なく動作するし音質的にもあまり問題はありません。しかし最近のアンプと接続しようとすると動作に余裕がないので、改造してみることにしました。

1.オリジナルの回路
 今回落札したSEA-100には取説も付いていました。この頃の機器の取説には回路図が載っているものが多いのですが、SEA-100もちゃんと回路 図が載っています。昔改造したSEA-100の取説も手元に残っていたので、同じだろうと思っていたら、回路図が少し違っていました。今回入手したものは、後 期のもののようです。
  イコライザ部分の基板の写真を下に示しますが、右下の円筒状のものは低周波数側のコイルです。250Hzと60Hz用のものが一つのケースに納まっていま す。これは、誘導ノイズを減らすためだと思われます。また、低周波数側のコンデンサにはケミコンが使われています。昭和40年代には、積層フィルムコンデ ンサの入手が困難でしたから、スペースの関係で止む終えない選択だったと思われます。



 イコライザ回路は、LCR共振回路とボリュームを使っています。ボリュームの中点はアースに、両端はトランジスタ のコレクタとエミッタに接続されています。スライダーにLCRの共振回路が接続されており、LCRの共振回路がトランジスタのコレクタ側に寄ると負荷抵抗 が小さくなり、信号が減衰します。逆に、エミッタ側に寄ると、エミッタ抵抗が小さくなり、信号が増幅されます。トランジスタは、昔オーディオ機器によく使 われていた2SC458LGCで、角形タイプのものです。

SEA-100のイコライザ部分のオリジナル回路概要

 ここには示していませんが、イコライザ回路の前にはバッファ回路が入っています。初期型は2SC458LGCのエミッタフォロワ、後期型はゲイン1のエミッタ接地増幅になってい ます。
 電源も下図に示すように初期型と後期型では違いがあります。後期型は、2SC538Aを使ったリップルフィルターになっています。

オリジナルの電源部分。上が初期型、下が後期型

2.改造の方針
 グラフィックイコライザアンプの一番望ましい形は、音を変えることなく特定音域の音量を変化させることです。ここでは音の変化が大きくなりがちな多段増幅-NFB回路は使わずに、オリジナルの回路を生かした構成とします。 但しオリジナルのままだと電源変動の影響を受けやすいので、定電圧電源とします。また、最近は入力インピーダンスの小さな機器が増えていているので、出力側にバッファアンプを入れます。
(1)イコライザ回路
 回路の基本構成は同じとしますが、オリジナルの回路だと出力電圧に余裕がないので、電源電圧を45V程度に上げます。
 プリント基板は、スライドボリュームに取り付けるための穴がたくさんあって、自作が大変なのでオリジナルを改造して使用します。
 増幅素子は、高耐圧高hfeのトラン ジスタでもよいのですが、FETを使いたかったのでgmの大きな2SK363とします。これは、4mA流した時のgmが40mSもあるので2SC458と 置き換えても問題なく使用できます。
 インダクタンス類は同等品を手に入れることが難しいので、そのまま使います。
 コンデンサ類については、オリジナルで使われている電解コンデンサのうち、大容量で電圧がかかる場所に使われているものは新しい電解コンデンサと置き換 えます。他の部分は、フィルムコンデンサを使います。今は、積層フィルムコンデンサが使えるので配置を工夫すればなんとか実装できます。
 周波数とLCRの組合わせですが、取説の回路図では下表のようになっています。コイルの直流抵抗は、テスターで測った値です。ピーク周波数と計算値が合わない組 合わせがあることから、実際に使われているコイ ルのインダクタンスが若干違っているようです。

周波数
抵抗(Ω)
コンデンサ(μF)
コイル(mH)/直流抵抗(Ω)
60Hz

3.3
1400/610
250Hz
100
0.68
600/490
1kHz
560
0.22
100/170
5kHz
680
0.068
22/30
15kHz
680
0.015
10/19

 電源は定電圧ですが、バイアス回路への影響を軽減するためバイアス回路とドレイン側の回路は、CRフィルタを入れることにします。


(2)バッファアンプ
 オリジナルでは、イコライザ回路の前にバッファアンプが入っています。この装置は、真空管アンプがまだ残っていた時代に作られた関係で、プリアンプの出 力インピーダンスが非常に高い場合があることを想定しています。
 しかし、現在では出力インピーダンスが高いプリアンプ、CDプレーヤーなどはありません。また、改造後のイコライザ回路の増幅素子にFETを使いますの で、前段のバッファアンプは不要と考えられます。逆に、イコライザ回路の出力インピーダンスは2kΩ程度あります。この値は最近のアンプから見ると若干高い値 ですし、このアンプに接続されるアンプの入力インピーダンスが低い場合は、イコライザ特性が変わってしまいます。このため、出力側にバッファアンプを入れ ることにしました。
 構成は、上図のように2SK364/2SJ104を使ったものにします。

(3)電源
 今回は、イコライザ回路に45V、出力バッファアンプに±18Vを供給しますので、トランスを追加します。回路図を以下に示しますが、いつもの ように無 帰還型の定電圧電源を使います。

3.製作
 ケースは、追加のトランスを取り付けたり、ヒューズホルダを追加したり、パイロットランプをLEDに変更したり、電源・バッファアンプ基板を取 り付けるための加工を行います。ここで気付いたのですが、ネジがJISネジでした。今では専門店に行かないと手に入らないので、紛失しないように気を付け ながら作業します。
 イコライザ基板は、オリジナルを改造して使います。両面のアディティブ法による基板らしく、ちょっと力を加えると銅箔が簡単に剥離しますので、気を付け ながら改造しました。

 スライドボリュームは汚れが付着しているせいか、接触不良がありました。車用のブレーキクリーナーをボリューム内部に吹き込み、スライダーを動かして洗 浄する操作を繰り返します。乾いてから、CRC-56を吹き付けて、数日乾燥してから基板を取り付けます。


改造後の基板


スライドボリューム
(かなり汚れていて接触不良があったので洗浄して使用)


電源+バッファ基板


改造後の全体の様子

4.特性と音
 グラフィックイコライザの各ポイントの最大位置と最小位置における特性を測定してみました。入力電圧は1Vrmsです。ピーク周波数が表示とは若干ずれていて、60Hz表 示のポイントで約40Hz、250Hz表示で約220Hz、1kHz表示で約1.1kHz、5kHz表示で約3.6kHz、15kHz表示で約13kHz となっています。また、高域側ほど重なりが大きくなっています。


 歪み率は、雑音が大きく影響しているために高めの値になっています。聴感上はノイズが気になることはありませんでした。発振器(ORC11)の最大出力電圧が1V程度なので、それ以上の入力電圧では測定していません。


 肝心の音ですが、表示を0dBにセットしてイコライザ回路を通したときと 通さない時の音の変化はかなり小さく感じます。良く聞いてみると、高音側の音 が僅かに中央に寄る感じがある程度です。 当初の目的は達成されたようです。
 三土会やお寺大会など、普段と環境が違う場所でもある程度の音質調整が可能になります。特に、こもる音を減らすなどの使い方が有効だと思われます。 ま た、グラフィックイコライザがあると、聞きたい音域を強調することができるので、音の確認などが楽になります。

 簡単な回路なので、適当なコイルとボリュームが入手できれば自作も容易だと思われます。


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