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乾電池1個で動作するアンプの製作(2005.12.29)

1.部品の検討
2.設計
3.組み立て
4.結果

 乾電池1個の電圧で動作するアンプがスピーカーを鳴らすことができるか? 結構難しい課題だと思います。もちろん、蚊の泣くような音ではなく、ある程度 広 い部屋で(できればHiFiで)はっきり聞こえる音ということが条件です。「手作りアンプの会」2005年冬のお寺大会の課題が半導体シングルアンプでし たので、シングルアンプ で考えてみることにしました。

1.部品の検討
 まず使用する半導体ですが、0.2Vくらいの電圧まで動作しないと出力がとれません。そうなると、FETでは無理でバイポーラトランジスタ、そ れも低電圧で動作するものが必要になります。比較的入手の容易なものでは、2SD773、 2SD787などがあります。ここでは、低電圧領域まで肩特性の良好な2SD773を使います。単に手元にあったというのが大きな理由です。電圧の利用効 率の面では2SD787が有利と思われます。

 次に単純に考えて、電源電圧1.5Vかつ抵抗負荷のコレクタ出力でスピーカーを鳴らすとなると、スピーカーを駆動する電圧は理想状態でもピーク-ピーク で1.5Vとなり、8Ωの負荷の ときの出力は、7mWとなってしまいます。 これでは、ある程度大きな音でスピーカーを鳴らすことは無理です。 実際には、半導体素子や、抵抗による電圧 ロス があるため、ますま す出力が小さくなってしまいます。 つまり、単純に半導体素子と抵抗だけではスピーカーを鳴らすのは難しいということになります。 そうなると、トランス を使うか、チョーク負荷にして出 力電圧を稼ぐ必要があります。

 しかしながら電圧が1.5Vしかないので、トランスを使うにしても、チョークを使うにしても、直流抵抗の小さいものが必要になります。チョークを使う場 合は、スピーカーが8Ω、有効電圧を1.2Vと仮定すると、150mAの電流を流すことになります。チョークの電圧ロスを0.1Vとすると、チョークの直 流抵抗は0.7Ω程度以下にする必要があります。この場合は、50mW程度の出力が期待できます。

 トランスを使う場合は、電流を多く流すことにより出力の増大を期待できますが、電流が大きくなるためにトランスの直流抵抗をより小さくする必要がありま す。乾電池を電源とすることから、余裕を見て電流を0.5A程度、トランスの1次側の電圧ロスを0.2Vとした場合、1次側の直流抵抗は0.4Ω程度とな ります。有効電圧を1V程度どし、スピーカーを8Ωとすると、巻き線比を1:4程度にすれば0.3W程度の出力を取れそうです。しかし、このような大きな 直流 電流を流すことができて、直流抵抗が小さく、巻き線比が1:4程度のトランスとなると、特注になるし、極端に重く、大きくなりそうで実用的ではありませ ん。

 ということで、2SD773チョーク負荷のアンプを作ることにします。

2.設計
 方針は、「入力インピーダンスは低くてもかまわないが、単体で1.5Vで動作するアンプ」とします。電圧が低いのでエミッタフォロワなどを入れると電池 が消耗したときに動作が不安定になりそうなので、2SD773 1石で済ますことにします。
 となると、余計なことは一切できなくて、下図のような簡単な回路になってしまいました。 チョークは、0.1Hくらいのものでないと低域で出力が落ちま す。また、直流抵抗が小さいことも必要です。 色々探したところ、無帰還アンプにの買ってあった電源トランスが目に付きました。インダクタンスは不明です が、20V巻き線の直流抵抗が小さいし、重量があるので期待できそうです。


3.組み立て
 組み立てとはいっても長く使うのではないし簡単な回路なので、木材に取り付けてしまいました。







4.結果
 組み立てて音出ししてみました。 入力インピーダンスが低いので、ヘッドホンアンプなど、出力インピーダンスの低いアンプでドライブする必要がありますが、意外と大きな音が出ます。 2005年冬のお寺大会では、FE-208S+長岡式D-55バックロードホーンの高能率スピー カーに助けられたせいもありますが、100畳の部屋で鳴らして、森山良子の「涙そうそう」のボーカル部分だけだと、かなりの音量で聞くことができました。 さすがに、バック演奏が入ってしまうと歪んでしまうので音量を下げましたが、それでもそこそこの音量が出ます。
 乾電池1個のアンプでも、かなりの音量が出ることを確認できました。

 簡単に特性を取ってみると、直線性はまあまあです。周波数特性も20Hzで0.8dB低下で済んでいます。チョークに使った電源トランスが非常に優秀の ようです。最大出力電圧は、ミリバルの測定で0.8V程度でした(8Ω負荷で約80mW程度か)。






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