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Chu Moyタイプヘッドホンアンプの製作
ディスクリートで組んだ無帰還ヘッドホンアンプはこちらです。

1.製作
2.OpAmp(オペアンプ)の比較 (OPA2604を追加 2004.7.22)
 (1)OpAmp、比較条件など
 (2)結果
 (3)通勤に使用した場合の比較 (2004.8.19)

スピーカーも鳴らすことができるヘッドホンアンプを作ったときに、比較材料としてChu Moyもどきヘッドホンアンプを作りました。その結果、これはこれなりにいい音であったので、携帯用のヘッドホンアンプとして組み立ててみました。

1.製作
(1)回路定数の決定
 既に数多くのサイト(Chu Moy氏のHeadWize中村さんのサイトなど)に情報があるので、あまり迷うことはないのですが、試しに作ったChu Moyもどきヘッドホンアンプの定数では、外部ノイズに弱いことが分かっていました。 パソコンの近くだと、OpAmp(オペアンプ)にNJM2114を使ってもパソコンのノイズを拾って大きなノイズ出ますし、電車に乗っていると電車の制動時のノイズを拾ってしまいます。 これは、入力に入れている150pFのコンデンサを大きな値にすれば解決できると思われたので、470pFに変更しました。 これにより、パソコンの近くや電車の中でもノイズが気にならなくなりました。 また入力抵抗は、バイポーラ入力タイプのOpAmpでも使えるように2kΩとしました。 これだけ小さな抵抗だと、入力側に発生する電圧が非常に低くなるので、直流カット用のコンデンサを省略してもボリュームがガリガリいうことはありません。 このため、直流カット用のコンデンサを省略しました。
(注意) 音源となるヘッドホンステレオには、電源のON-OFFや、早送りなどのときに直流が出るものがあります。このような場合は(b)のようにカップリングコンデンサを入れないと、電源電圧の中点であるアースの電位がずれてしまい、音が出なくなります。ヘッドホンを壊す可能性がありますので、心配な人は、カップリングコンデンサを入れた方が良いでしょう。 スペースの関係で電解コンデンサだけを使う場合があると思いますが、タムさんの実験(6BM8シングルアンプなどに実例があります)によれば、音は巷に言われているほど悪くはないようです。
 電源部は、低音まで安定に動作するようになるべく大きな容量のコンデンサを使いたかったので2200μFにしました。パラに、積層セラミックコンデンサを入れています。 アース電位を決める回路は、どうせ電流を流すのですから、パイロットランプも兼ねて抵抗とLEDにしました。 電池が切れた場合は、交流電源で使うことができるようにDCジャックも付けることにしました。




(2)組み立て
 アンプ部は、ユニバーサル基板を使っています。 OpAmpを交換して音質を確認したり、OpAmpの雑音のテストにも使えるようにICソケットを使いました。
 ケースは電池を交換することを考える必要があるので、100円ショップへ行って使えそうなものを探したところ、ストッパー付きのミニケースが見つかりました。 これを加工してアンプ、ボリュームなどを取り付けました。


アンプ部。パイロットランプ兼アース作成用のLEDが光っています。


ケースに収めた様子。ACアダプタを接続しています。

2.OpAmpの比較
(1)OpAmp、比較条件など
 OpAmpを変えると音が変わるという報告が多いのですが、実際にどの程度変わるのか試してみました。 Chu Moy氏のお薦めはBB(バー・ブラウン;今はテキサス・インスツルメンツ)のOPA132、OPA134或いはそのDualタイプのOPA2132、OPA2134です。若松でOPA2134を見つけたのでこれを購入しました。 NJM4559DFは、Accuphase E-301を修理したときに外したものです。 その他は最近購入したNJM2114、NJM4580を含めて、たぶん秋月で買ったものです。
 ひょんなことから、OPA2604を購入することになったので、これも追加しました(2004.7.22)。


試したOpAmp。いつのまにかたくさん抱え込んでいました。


普段だと買うことはなかったOPA2604

 音源は、パソコンに取り込んだwavファイルをwinamp5で再生し、Korg U1のラインOUTから出力したものです。 ヘッドホンはオーディオテクニカのATH-A9X、ヘッドホンアンプの電源は、通常使用する条件を考慮して電池としました。 使った音楽は、以下の通りです。

・杉田二郎 「祈り~Prayer」(with 森山良子)
・加藤登紀子 「時には昔の話を」
・赤い鳥 「竹田の子守歌」(EPレコードから録音したもの)


(2)結果
 以下は私の独断と偏見の評価結果ですから、音の好みが合わなくても責任は持てません。

 さて、OpAmpでどのくらい音が変わるかということですが、音は確かに変わりますし、文章化すると下表のようになります。 しかし、これは短時間にOpAmpを取り替え、同じ曲の同じ部分を何度か比較した結果です。
 これが、ある程度時間を空けてランダムに取り替えて聞いたら、違いは分かり難いと思います。 ノイズが多くて高音が強調された感じのLF412CN、NJM072D、 値段相応に奥行き感・透明感が高いOPA2604 以外は区別がつかない可能性が高いと思います。

型名
雑音
低音
高音
音の輪郭
奥行き感・音の延びなど
評価
グループ
OPA2604
少ない
豊か
普通
「い」「ろ」のグループよりも良好
「い」「ろ」のグループよりも良好
値段が高いだけあっていい音
OPA2134
少ない
豊か
やや強調
良好
良好
低音、高音強調タイプ
NJM2114D


抑えめ


中音域重視タイプ

NJM5532DD






NJM4558DD
上の3個よりは多い
やや豊か
やや強調


高音重視タイプ
NJM4559DF






TA75559P






LF412CN
多い
軽い
強め
あまい
平面的
ノイズが多くて使い難い

NJM072D
やや多い

強め
良好だがきらきらした感じ
やや良好

NJM4560D
4558、4559系よりも多い
やや豊か
やや強調
余計な音がくっついている感じ
やや平面的
他にOpAmpがなければ、これでも十分使える

NJM4580DD
NJM4560よりも多い






 次にどれを選ぶかということですが、グループ「い」「ろ」「は」の中から選べば音質に不満はないと思います。他にOpAmpがなければ グループ「ほ」 から選んでも十分使えます。
 個人的には、NJM2114、NJM5532の音が好みですが、FET入力ということで回路設計上の自由度の高さ、十分な音質という点ではOPA2134も捨てがたいものがあります。

 NJM4580DDはオーディオ用だし、±2Vから使えるということで期待していたのですが、音質面ではグループ「い」「ろ」に較べると奥行き感がなくなっています。また、若干ノイズが気になりました。 意外と良かったのが4558、4559系のグループ「は」でした。今回使ったロットが良かったのかもしれませんが、雑音も少なく十分使えます。

 OPA2604は、音はいいのですが動作電圧が±4V以上なので電池動作では苦しいと思われます。 据え置き型のアンプに使ってみる価値はありそうです。 ただ、OPA2604であっても、音質面ではNO-NFBヘッドホンアンプにはかなわないので、本格的な据え置き型のアンプを使おうと思ったら、ディスクリートで組むことになると思います。


(3)通勤に使用した場合の比較 (比較試聴中;随時更新)
 騒音の小さい部屋の中で比較した結果を (2) に書きました。 ところが電車の中など、通勤途中の比較的騒音の大きな所で使うと(2)とは少し違う結果になってきたので書いてみます。 騒音の大きな所では、相対的に低音が聞こえにくなるため音量を大きくして低音のバランスを取ろうとします。 こうなると、小音量では目立たなかった歪み感が強調されてくるようです。

 あと、全体に言えることですが、電源をONにしてから30分位はどんどん音が変わっていくようです。 少し低音が出るようになり、音の通りがよくなってきます。 OpAmpのせいか、それとも電池、ケミコンなどのせいか確認はしていませんが、注意する必要がありそうです。

条件

比較的騒音の大きな場所での比較結果
型名
歪み感
奥行き感・音の延びなど
評価
グループ
MDプレーヤMD-E80単独
歪み感は小さいが、高い方の音が伸びない。
やや平面的。左右の広がりが不足
ヘッドホンアンプを通した方が音が良くなる。

OPA2604
高音が伸びていて低域不足。低音を聞こうとして音量を上げると、耳障りになる感じがある。
NJM2114よりも、いいと思う
高音の好きな人、高音の出ないヘッドホンを使っている人にはいいかもしれない。長く聞いていると疲れる。

OPA2134
少し、ざらついた感じ
奥行き感はあるが、左右の広がりがない 音が通りにくいので、或る程度音量を上げる必要がある。
NJM2114D
高音がよく出ているが、歪み感は小さい
音がよく聞こえ、奥行き感が出る
音量を上げても歪み感が小さい。長く聞いても疲れない。

NJM5532DD
NJM2114に較べると高音が抑制気味。歪み感は小さい
横の広がりが少ない
NJM2114に較べると線が太くなり、少しサ行が荒れる感じ
NJM4558DD
歪み感は小さいが低音不足
平面的で左右の広がりがない
音が詰まっている感じ
TA75559P
歪み感は小さいが低音不足
やや平面的
聞きやすい音だが低音不足
LF412CN
歪み感は小さい 音の広がりがなく、中央に集まる傾向 静かな所で問題だった雑音は気にならない。音のバランスはとれている。
NJM072D NJM2114よりも高音が伸びている。歪み感は小さい 平面的 高音よりだが、意外と低音が出ている。
NJM4580DD
高音が伸びていないこともあるが、歪み感は小さい
横の広がりはあるが平面的
音にエコーがまとわりつく感じがあり、音の線が太くなる。ただ、聞き疲れはし難い。


 騒音のある環境で聞く場合は、OpAmpの雑音は無視できます。 また、低音が聞こえにくくなるので音のバランスを取ろうとして音量を上げることになります。 こうなると高音域が荒れ気味のものや、高音が強調されるものは、聞くに堪えない音になりやすいようです。
 結果的に、音が素直で広がりがあるNJM2114、聞きやすい音のNJM5532あたりがお勧めとなました。


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