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74HC574 4パラ R-2RディスクリートDAC 2006.8.7
2006.9.1修正・追加
2009.05.31電源関係の記載追加

1.R-2RディスクリートDACの課題
(1)課題

 手作りアンプの会の会員である上野氏がオー ディオ用 として使い始め、基板配布配布などを行っているR-2RディスクリートDACですが、仕組みの面白さもさることながら、既存のDACにはない伸び伸びした 音が 魅力です。
 しかしながら、課題がいくつかあることも事実で、特に抵抗の精度と、DA変換部のロジックIC(ここでは74HC574)の出力インピーダンスがDAC の精度に大きく影響します。 このことは、手作りアンプの会の「三土会」「お寺大会」などでも確認されていて、R-2Rラダーの抵抗の精度を J級 →  F級 → F級選別品 のように上げていくと 音の荒さ が少なくなります。つまり、抵抗の精度が重要な要素ということにな ります。
 R-2R部に使う抵抗の精度は、3・1/2桁の汎用デジタルテスタで測定すれば、相対精度を0.1%程度或いはそれ以上の精度で選別することが可能です。また2R部の抵抗 をパラにして測定し、R部にその値と同じ抵抗を使用すれば、デジタルテスタの絶対値誤差の影響を気にしないで0.1%以上の精度でR-2Rラダーを組むこ とができます(選別方法はこちらを参考にしてください)。(この場合、デジタルテスタは再現性と長時間の安定性が良好なものであ る必要があります。必ず、基準となる抵抗を準備しておいて、測定の最初と途中、それに最後に基準となる抵抗を測定し、測定値が変動していないか確認しま す。) まあ、高価なマルチメータを使用すれば、もっと高精度に測れますが・・

 しかしながら、抵抗の精度に関係する大きな要素は、R-2R部の抵抗だけでなく、ロジックICの出力インピーダンスがあります。(その他にも電源などの 影響もあります が理想電源が使えるものとして話を進めます。)
 ロジックIC の出力インピーダ ンスは、2R部にシリーズに入ってきます。 fujiwaraさんの「R-2R LADDER DAC 実験記」、同じくfujiwaraさんの「お気楽オーディオキット資料館-写真館」のKさんの 記事などによれば、ロジックIC(74HC574)の内部抵抗は実測した結果から22.9~26.5Ωとなっています。ま た、手作りアンプの 会の前田さんも第70 回三土会で同様の結果であったと報告していました。
 74HC574のもう一つの問題は、メーカー(Fairchild、Texas Instrumentsなど)のデータシートを見るとHigh側とLow側で電流-電圧の関係が違っており、Low側の出力インピーダンスが若干低いと思 われることです。

(2)74HC574等の出力インピーダンス(2006.9.1追加)
 その後、前田さんから74VHC574、74HC374(74HC574のピン配置違い)の出力インピーダンスに関する情報を頂きました。感謝、感謝 です。
 上のデータが74VHC574の測定値、下のデータが74HC374の測定値です。 VHCタイプは、HCタイプに較べると出力インピーダンスが若干高 いようで、High側が4パラで8.5オーム弱、Low側が7オーム程度です。
 これに対して、74HC374は、それぞれ26.8÷4=6.7オーム、23.8÷4≒6オーム程度になります。


前田さんの74VHC574インピーダンス測定データ


前田さんの74HC374インピーダンス測定データ


2.課題の解決方法
 さて、ロジックICの出力インピーダンスを含めた抵抗値でR-2Rの精度を出すにはいくつか方法が考えられます。ここでは、ロジックICのHigh側と Low側の出力インピーダンス差を 10 5Ωと仮定して話を進めます。

(1) R-2Rの2R部の抵抗を、ロジックICの出力インピーダンスだけ低い値のものを使う。
 この方法でもよさそうですが、ロジックICのHigh側とLow側の出力インピーダンス差は残ってしまうので、精度の面で不可です。
(2)
ロジックICを8~12パラくらいにする。
 この方法であれば、ロジックICの出力インピーダンスを2~3Ω位に下げることができ、ロジックICのHigh側とLow側の出力インピーダンス差も 1 0.5Ω程度と3・1/2桁汎用デジタルテスタの測定精度以下になります。
 そして、2R部の抵抗を2Ω程度小さくすれば、ロジックICの出力インピーダンスを含めたラダー抵抗の誤差は汎用デジタルテスタの分解能(1Ω)よりも小さくなってしまいます。汎用デジタルテスタを使って自作する場合は、これ以上の精度は望めません。素人が自作する場合のディスクリートDACのほぼ理想的な形と思われます。
 一方、工業用の高価なマルチメータを使って抵抗を選別しても、ロジックICの出力インピーダンスを考慮するとあまり精度は向上しません。この位の精度が妥協点ではないでしょうか。 欠点は、ロジックICの代金が嵩むことです。
 
(3)
ロジックICを4パラにし、ロジックICの出力インピーダンス分は2R部の抵抗の値を小さく す る。
 ロジックICの出力インピーダンスは4パラにして6~7Ω程度とし、この分(6Ω)2R部の抵抗値を小さくします。ロジックICのHigh側とLow側の 出力インピーダンス差は2.5 1.2Ω程度となるので、2Rとして3.6kΩを使うのであれば誤差が0.05%程度以下であり 許容範囲です。
 この方法は、2Rに使う抵抗を大量に選別する必要があるので、2の方法を一長一短となります。
 この方法は上記(2)よりもロジックICの出力インピーダンスの影響を強く受け、精度が落ちます。しかし、ロジックICの出力インピーダンスを含めたラダー抵抗の誤差は3・1/2桁汎用デジタルテスタの分解能(1Ω)と同程度となります。汎用デジタルテスタを使って自作する場合の精度限界に近いわけで、この方法も一つの解答になると思われます。
(ロジックICのHigh側とLow側の出力インピー ダンス差を10 5Ωと仮定)

 今回は、(3)の方法でR-2RディスクリートDACを組み立てることにします。

3.製作
(1)部品
 私の場合、R-2R部の抵抗は1.8kΩと3.6kΩを使っています。以前300本買ったものの、既に2台作ったので2R部が6Ω小さくなる組合わせの 抵抗が不足します。このため、追加で300本ずつ買って選別しました。
 R部にはデジタルテスタの表示値で1.789kΩ、2R部には1.786(2本パラにしたときの測定値)×2kΩ=3.572kΩの抵抗を使っていま す。但し、2R部のうち上野さんの回路図でR1、R17、R51、R67については、1.789×2=3.578kΩを使います。
 その他は、上野さんが配布した基板を使って組み立てますので、今まで手元に溜め込んだ部品を使います。


(2)電源 (2009年5月追記 改造は2007年春頃に実施)
 以前記載していた「ツェナーを使ったシャントレギュレータ」は発熱がすごいので、なんとかならないかと考えていました。色々(というほど考えていた訳ではないですが)なアイディアのうちの一つに、三端子レギュレータの出力にCRフィルタを繋いでしまうものがありました。これであれば、三端子レギュレータの癖も緩和されるだろうと思われます。レギュレーションが悪くなることも考えられますが、そんなに大きな電流が流れる訳でもないし問題にはならないと思われますので、まず作って確認してみることにしました。
  回路図を以下に示しますが、トランスはAC18Vのものを使い整流ダイオードの後に抵抗を入れて電圧を落とします。この抵抗は、電源からの干渉を緩和してくれるだろうという期待も込めて入れていますが、効果は分かりません。
 三端子レギュレータの後ろには、4.7Ωの抵抗を4本と2200μFのコンデンサを入れます。
 音出ししてみると、三端子レギュレータの癖が抑えられ、ツェナーを使った電源と同等の音になりました。
 24bitDACの電源は、この結果を受けて組み立てています。




-----以下は以前の内容------
 電源は、5V5Wのツェナーダイオードを使ったシャントレギュレータで、74HC574の左ch部、同右ch部、 デジタル部の3電源です。ツェナーダイオードのノイズを減らすため、CRフィルタを入れてあります。  ツェナーダイオードは選別して使いますが、5Wくらいのものだと今回のように電流が少ない場合は低めの 電圧になるものが多いようです。 また、CRフィルタの抵抗でも0.1~0.2V程度の電圧降下があります。 さらに、DACを接続しない状態と、接続し た状態ではツェナーダイオードに流れる電流が変わりますので、DACを接続した状態で電圧を確認します。
電圧が0.4~0.5Vくらい低い場合は、整流ダイオードをシリーズに入れる などして5V±0.15Vくらいに納まるようにします。  また、CRフィルタの出力側コンデンサは電源のインピーダンスを下げるため、1000μF+4700μFにしてい ます。
( 3端子レギュレータを使った電源を使うと、音が荒れて奥行き感がなくなってしまいます。  R-2RディスクリートDACは電源による影響が強く出るようで、電源についてももっと調べる必要がありそうです。)




----ここまで----

4.出てくる音
 74HC574シングル+R-2R部に0.05%レベル選別品を使ったものと、74HC574 4パラ+R-2R部に0.05%レベル選別品で 2R部の抵抗を6Ω小さな値にしたものを使い、比較してみました。 前者は、2R部の抵抗が27オーム程度(0.75%程度)大きな方にずれていることに なります。
 両者とも、上記のシャントレギュレータ電源を使いました。

音楽:加藤登紀子 冬の蛍
音源:パソコンにUSBサウンドアダプタを接続し、ASIOデジタル出力を使用
ヘッドホンアンプ:自作無帰還タイプ
ヘッドホン:ATH-A9X

 最初は雰囲気が違う感じがするものの、どこが違うのかはっきりしませんでした。DACの切替は、電源、デジタル入力、アナログ出力のコネクタを差換える ため時間がかかり、比較するポイントがなかなか見つからな いのです。このため、DACを切り替えて交互に聞き比べしていきました。何度か聞き比べていくと、分解能に違いがあることが分かってきました。加藤登紀子 の朗読の部分が4パラDACだとちゃんと分離して聞こえるのですが、74HC574シングルだとバックの音楽に邪魔されて聴き取りにくくなります。

(2006.9.1追加)
 その後、色々な曲を細かく聴き較べてみたのですが、74HC574の出力インピーダンスを考慮していなかったR-2RディスクリートDACに較べると、 分解能が格段に向上しているような感じがあります。今まで、普通に歌っていると感じていた曲が、細かい息遣いまで分かるようになりました。

 以上のことから、R-2RディスクリートDACは、ロジックICも含めたR-2Rラダー抵抗の精度に気を遣う必要があることが分かってきました。

5.今後の予定
 74HC574を10パラくらいにしたR-2R DACを作ってみようかと考えています。 また、電源の影響が大きいので、もう少しレギュレーションの 良いツェナーを使ったシャントレギュレータも試してみたいような気がします。


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