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自作NO-NFB (NON-NFB,無帰還) CR型イコライザーアンプの製作記録
 改造編(2009年8月)はこちら

はじめに
1.設計と製作
 (1)アンプ部
 (2)電源部(2003.10.25変更)
 (3)測定結果
2.音
最後に
CDとLPレコードの音

はじめに
 メインアンプは、NO-NFBにすることで、私の好みの音が出ることは分かっていました。しかし、イコライザーアンプは、エレクトレット・コンデンサー・カートリッジがいい音を出していたので、そっちに力を注いでいて、作るのが少し遅れました。

 また、イコライザーアンプの場合は、NO-NFBということになると、必然的にCR型になります。CR型だと、イコライザー回路をどこに置くかとか、RIAA特性に従って高音側出力電圧が高くなるため許容入力電圧をどの位に設定するかとか、増幅回路をどのようにするかとか、決めなければならない要素が結構あります。

1.設計と製作
(1)アンプ部
 回路図を示しますが、ソース接地のシングル増幅+ソースフォロワが2組あり、CRイコライザーはその中間に入っています。このアンプは、一見してシングル増幅に見えないくらい、余計なものがくっついています。
 まず、2SK43のソース側に、定電流回路が接続されています。これは、2SK43の電流変化を少なくするためのものです。また、2SK43のドレイン側は、カスコード接続にしてあり、2SK43のゲート電流を低く抑えています。そして、負荷は定電流回路+抵抗になっていて、電源変動の影響を少なくしています。
 出力は、2SK43のソースフォロワです。無線と実験1977年2月号の132頁に落合萌さんの記事があり、実質的に2SK43の耐圧は60V程度あるということです。ですから、電源電圧の60Vに耐えられるだろうということで使用しています。

回路図をクリックすると、拡大表示されます。
NO-NFB_EQ1

 CRイコライザーは、通常見かけるものと若干違っていて、1.5kΩの抵抗と直列に47kΩの抵抗を接続しています。これは、2段目のアンプのゲート電位を決めるためのものです。もちろん、RIAA再生特性への影響はないことを確認してあります。(計算方法はここ
 調整ですが、まず2SK43のソースに接続されている定電流回路の電流を設定します。その後、出力側の定電流回路の電流を調整し、出力電圧が36V程度になるようにします。交流出力電圧は、±20Vp-p程度だと思われます。
 特に、変わった部品は使用していませんが、CRイコライザーの部品は、F級の金属皮膜抵抗と、実測したコンデンサを使用するのがよいかと思います。他の抵抗は、炭素皮膜抵抗で問題ありませんが、ノイズを気にするようであれば金属皮膜抵抗が無難でしょう。
 実は、調整中にオシロスコープで見ていたら、片方のチャンネルだけがノイズが多いのです。出てくる音を聞いている限りでは、ノイズが多いということはなかったのですが、調べてみると、2SK43のソースに入っていた1kΩの炭素皮膜抵抗がノイズ源でした。他の炭素皮膜抵抗に交換して、ノイズは無くなりましたが、こういうこともあります。


eq
1段目アンプとイコライザー回路付近

(2)電源部
 電源部は、ベース電圧を固定したエミッタフォロワ出力です。電源部も、なるべくNO-NFBにしたかったのですが、調整が面倒になるのでやめました。しかし、オールオーバーのNO-NFBではなく、電圧を決めるためのシングルアンプのNFBになっています。
 +側は、電圧が高いので、気を付けないとFET、トランジスターを破損することがあります。当初は、-側と同様にFETの定電流電源を使っていたのですが、壊れたため抵抗に変更しました。(回路図1)

(2003.10.13) 電源部の製作
 特性データを採ったりしていじくり回しているうちに、突然プラス側の出力電圧が安定しなくなってきました。このため、電源回路を作り直しました。以前から、安定化出力側のケミコン容量を大きくしていたためか、安定化電源のパワートランジスタが壊れやすいようなので、インピーダンスは高くなりますがMOS-FETに変更しました。また、安定化出力側のケミコン容量を一般的な値にしました。 カスコード接続している2SC2240ですが、特性の改善というよりは発熱を分担させることが目的です。(回路図2

(2003.10.25) 電源部の変更
 2003年10月13日に作った電源において、ツェナーダイオードと2SC2240で構成している定電圧回路への電流は、3kΩの抵抗で供給していました。

 ここは定電流回路を使うことが好ましいことは分かっているのですが、定電流回路をJ-FETで構成しようとすると、高耐圧のFETが必要です。 通常の動作では高電圧がかかることはないのですが、起動時や保護回路が働いた場合に80Vの電圧がかかってしまいます。 この電圧に耐えられないとFETが壊れ、続いて他のトランジスタやツェナーダイオードなどが壊れてしまいます。 EQアンプを作った当初は2SK30を使っていたのですが、何度か壊れたことと、適当なFETが見つからなかったので抵抗にしていました。

 定電流ダイオードというものがあることは知っていたのですが、なんとなく耐圧が低いだろうという思い込みがあって、使わずにいたのです。

 しかし、石塚電子株式会社の定電流ダイオードのカタログでインピーダンスを調べているとき、耐圧が100Vもあることが分かりました。 これだと、保護回路が動作して80Vの電圧がかかっても十分使えます。 Eシリーズは最大300mWですが、余裕を見て80Vの電圧がかかったとき半分程度の熱負荷になるものを選ぶと電流は2mA程度となり、E-202を使うことにしました。 定電圧回路には、抵抗側に約2mA流れますので、E-202が1本だけだと2SC2240に流す電流が不足します。そこで、E-202を2本使いました。 最終的な回路は、回路図3のようになります。 定電流ダイオードを採用したことで、以前よりも出力電圧が安定するようになりました。(回路図3
(2003.11.24) さらに電源部の変更
 その後、しばらく安定に動作していたのですが、起動時に2SA970に流れる電流を減らそうとベースに抵抗を入れたとたん、発振してしまいました。回路図3の回路では、うまく動作していたように見えただけのようです。
 2SA970と2SC2240の組合わせによる電流増幅が大き過ぎるのが原因ですので、2SC2240のベースに入れる抵抗を大きくすることで対処しました。但し、抵抗が大きすぎると保護の役目をしなくなりますので100kΩとしています。 これで、ようやく安定に動作するようになりました。 最終的な回路図を以下に示しますが、簡単な動作の割には少々複雑になってしまいました。 



 電源回路は、可能であれば左右独立、1段目と2段目のアンプも独立の4電源にすれば、理想的です。アースの配線が楽になるし、当然、ステレオ感も改善されます。予算と、ケースの容積との兼ね合いで決めたらよいかと思います。

in
ケース内部 色々手を加えたため、バラック状態です。特別な部品などは使っていません。

(3)測定結果(2003.10.11)
 ちょっと変わった構成のアンプなので、ユニットアンプの特性を測定してみました。 信号はefuさんのWavegeneを使って発生させ、ミリバルで測定しました。 歪率の測定は、同じくefuさんのWaveSpectraを使いました。 パソコンとある程度の性能を持つサウンドユニット、それにミリバルがあれば、簡単に測定できてしまいます。 但し、歪率についてはあくまで目安です。 機会があれば、この測定法の精度を調べてみようと思っています。 Korg U1の出力は、16kHzで約-0.3dB、20kHzで約-0.8dB低下しますが、本格的な測定をするのでなければ、十分使えます。

 ユニットアンプの利得は約28倍であり、ほぼ予想通りの結果になりました。
 一番心配していたのはFETの定電流回路が、高域になると抵抗値が下がってくることです。 定電流回路の抵抗が下がると、それに伴って高域の利得が低下することになりますので、まず周波数特性を測定してみました。 出力電圧を1Vとしたときの周波数特性を下図に示しますが、20Hzから20kHzまでほぼフラットな特性でした。
 


 また、ユニットアンプの歪率特性を下図に示します。歪率は、アッテネッターで減衰してから入力して測定しました。 FET 1個で増幅していて、かつNO-NFBアンプだと、歪率はこんなものでしょう。 歪率特性からクリッピングポイントは判定し難いのですが、おおよそ12V付近のようです。



 同様に、イコライザーアンプ全体の歪率特性を下図に示します。 1kHzにおける利得は、約53倍でした。




 イコライザーアンプのRIAA特性を下図に示します。100Hz以下の膨らみは計算上でもあったものなので予想通りだったのですが、コンデンサの誤差のためか、低域側でプラス側(100Hzで+0.5dB)、高域側でマイナス側(20kHzで-0.5dB)に誤差が出ています。



2.音
 これを作った頃のプレーヤーは、アームがオーディオクラフトAC-300、ターンテーブルがソニーのTTS-6000、シェルがオーディオクラフトのAS-2PL 、カートリッジは、オーディオテクニカAT-15E(当時、私が常用していたものです。20年間以上作られたロングセラー) でした。比較に用いたアンプは、初期の金田式プリアンプです。
 NFBアンプと、NO-NFBアンプの違いがそのまま出ていました。当時の金田式プリアンプは大きな値の抵抗を使用していることもあって、このNO-NFBイコライザーアンプに較べると、線が細く、サ行の声が荒れ、奥行き感がなくなっていました。

最後に
 このイコライザーアンプは、まだ現役で働いています。途中で、電源部が故障して部品を交換したり、半固定抵抗の調整を行ったりしましたが、それ以外は特に問題なく動作しています。プレーヤーの方は、 アームがオーディオクラフトAC-3000+ストレートアームのMC-S/T、ターンテーブルがDENONのDP-80、 カートリッジは、オーディオテクニカAT-160ML (AT-15Eaも持っています)に変わりました。しかし、最新のカートリッジのスピード感のある音を問題なく再生できています。

CDとLPレコードの音
 CDとLPレコードの音の違いについての議論をよく耳にします。私が同じソースの音楽を比較した結果では、LPレコードの方が奥行き感、空気感がよく出ているように感じます(NO-NFBイコライザーのせいかもしれませんが)。但し、比較できるものは、古い録音のものしかありませんでした。
 最新の、デジタル録音したものでは、CDの方が良いのではないかと考えています。LPレコードを製作する工程を考えると、デジタルの方が絶対有利であることは間違いありません。なんといっても、CDの方が扱いやすいし・・・


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