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RIAA CR型イコライザーの計算
新しいページはこちら。このページは更新しない予定です。(2009年9月)

 RIAA CR型イコライザーの回路についてはたくさんの報告があると思われるので、ここで詳しく解説する気はありません。しかし、使われなくなってきている技術であるためか、インターネットを検索しても、簡単な計算方法がなかなか見つからないようです。 RIAA CR型イコライザーの計算方法については、  かつさんのサイトにありますが、私のような初心者にとってはちょっと面倒かなというような気がします。 ここでは、これからRIAA CR型イコライザーを作ろうという人で、数学に馴染みがない人の参考になるように簡略化した計算方法を紹介したいと思います。

 RIAAカーブのデータは、The Bona's HomePageなどにありますので、参考にされたらよいかと思います。ここのページには、EXCELのデータもダウンロードできます。
 レコードの再生は、RIAAカーブだけかと思っていたら、 「古いイコライザーカーブについて」 に色々な規格があったことが書かれていて、参考になります。


1.標準的なRIAA CR型イコライザー
2.実際のRIAA CR型イコライザー
3.<付録>NF型イコライザーの計算 (2004.07修正)


1.標準的なRIAA CR型イコライザー

 さて、標準的なRIAA CR型イコライザーの回路は、以下のようになります。

 この回路定数を求める例として「無線と実験」1976年7月号147頁(或いは「無線と実験」1975年11月号)の安井さんの記事に計算式があります。

T1 = 3.18ms ≒ R1×(C1+C2)+R2×C1  (3.23ms程度にするのがよい)
T2 = 0.318ms ≒ R2×C1
T3 = 0.075ms ≒ {(R1×R2+(R1+R2)×R3)×C1×C2} ÷ {R1×(C1+C2)+R2×C1}   (0.0738ms程度にするのがよい)
 単位:RはkΩ、CはμF

 まず、R2 と C1 を決めます。E24系列 (E24系列については、こちらこちらなどに解説 があります) の抵抗とコンデンサから 0.318ms に近い組合わせを選びます(例えば、6.8kΩと0.047μFで 0.32ms)。
 次に、R1=(T1-R2×C1)÷(C1+C2)で、C2=0、T1≒3.23としてもR1=63.8kΩとなりますから、R1をこれより小さな値を選びます。 E24系列の中から、例えば56kΩとします。 こうすると、C2={(T1-R2×C1)-R1×C1}÷R1 = {(3.23-0.32)-56×0.047}÷56 = 0.0049  となりますので、C2を0.0047μFとします。
 最後にR3=[{T3×(R1×(C1+C2)+R2×C1)}÷(C1×C2)-R1×R2]÷(R1+R2) 
= [{0.0738×(56×(0.047+0.0047)+0.32)}÷(0.0047×0.047)-56×6.8]÷(56+6.8) 
= 9.9
E24系列の中から近い値のものを選びます( R3 が10kΩ)。

 実際には、もう少し微調整が必要です。下記のエクセルの計算シートなどを利用するか、安井さんの製作記事などに記載のある定数を利用するといいでしょう。

2.実際のRIAA CR型イコライザー
 さて、実際のRIAA CR型イコライザーは20Hz付近で60dB程度増幅する必要があるため、 本サイトの例にもあるようにアンプを2個使い、中間にイコライザー回路を入れるのが普通です。  このとき、一つ目のアンプの出力の直流成分が無視できる程度であれば、上記回路を使っても問題はありません。 しかし、NO-NFBアンプの場合は、 ドリフトによる直流成分が無視できません。このため、直流をカットするためのデカップリングコンデンサが必要になります。
 この場合、次に続くアンプの入力電位を固定するための抵抗 R4 が必要になり、イコライザー回路は下記の3種類が考えられます。

(追加)
 インターネットで、たまたま真空管アンプの製作記事などを見ていたら、 「コンデンサのリニアリティ向上のためにDCバイアスを掛けて動作させる」という記載が目につきました。 その場合の回路例として、下記 d. のようなものが考えられます。 このような使い方をすることは、音質向上に効果があるかもしれません。 

a.

 デカップリングコンデンサ C3 の直後に電位を固定するための抵抗 R4 を入れる。イコライザー回路の定数は、ほとんど変更する必要がない。CRイコライザーによる利得のロスも最小限に抑えることができる。
b.

 次に続くアンプの直前に抵抗 R4 を入れる。 R4 の値にもよるが、RIAAカーブに合わせるためには、標準的な回路CRイコライザーの定数を若干変更する必要がある。
 R4 に比較的小さな抵抗(100kΩ以下)を用いる場合は、RIAAカーブに合わせるために回路定数の変更が必要になるし、数dB程度の利得のロスが発生する。
c.

 中間の位置に抵抗 R4 を入れる。b.と同様に、R4 に比較的小さな抵抗(100kΩ以下)を用いる場合は、標準的な回路CRイコライザーの定数を変更する必要がある。また、利得のロスがある。
d.

(追 加)
b.の変形であるが、この回路では、全てのコンデンサに直流バイアスを掛けて使うことができる。1つ目のアンプの出力に直流電圧が重畳している場合は、試してみる価値があるかも

 a.の回路を使えば、一番問題が少ないような気がします。しかし、真空管アンプのように出力インピーダンスが高い値であるとか、出力インピーダンスを特定し難いとかという場合は、b.の回路を用いる場合が多いようです。
 私の場合は、手持ちの抵抗とコンデンサの組合わせの関係で、c.の回路を採用してしまいました。

  各回路についてExcelで計算できるようにしてみましたので、興味のある人は使ってみて下さい。resultシートの黄色の部分に抵抗値、コンデンサの容量値を入れるとRIAAカーブの偏差が計算できます。 お仕着せの回路を使っているのは面白くないとか、回路定数を変えたときの音の変化を調べるとか、意図的にRIAA再生カーブを変更するとかのときに利用できるかと思います。

番号
Excelファイル名
a.
R-CREQ.xls
b.
CREQ-R.xls
c.
CRREQ.xls
d.
CREQ-CR.xls

3.<付録>NF型イコライザーの計算
 ついでですから、NF型イコライザーアンプの簡略化した計算方法も示しておきます。 これについても、詳しい解説があちこちにあるはずです。 「無線と実験」1976年8月号には、下図のような回路についての計算法が載っています。

C1*R1 = 3.18ms
C2*R2 = 75μs
C1 = 3.24*C2

 1kHz付近の増幅率は大体 R2/R4 となります。



 具体的な決め方ですが、1kHzの増幅率を 34dB 程度とし R4 を1.5kΩとすると R2としてはE24系列から68kΩを選びます。 C2*R2 = 75μs ですから C2 として1100pFを選ぶと、C1 = 3.24*C2 からE24系列の近い値として C1 を3600pFとします。 R1 については、アンプの裸の利得が十分大きい場合は C1*R1=3.18ms から計算しても良いのですが、実際にはアンプの利得が不足してくるため大きめの値を選び、1MΩとします。 低雑音OPアンプを使う場合は、裸の利得が十分大きいので R1 は820kΩ程度にします。
 実際の回路では、高域側の帰還量が大きくなり過ぎてアンプが不安定になるのを防ぐため、下図のように R3, R7を挿入することが多いようです。

 下図の回路について、RIAA特性を計算するExcelデータを作りました(こちら)。興味のある人は使ってみて下さい。使い方は、resultシートの黄色の部分に抵抗値、コンデンサの容量値、アンプの裸の利得(dB)を入れるとRIAAカーブの偏差が計算できます。
R5はアンプの出力抵抗、R6は次段の入力抵抗と考えて下さい。
 当然のことですが、アンプは安定に動作することが前提です。 アンプが発振しているとか、不安定であるとかは、計算の対象外です。 (アンプの動作が不安定だと、RIAAカーブの途中に山が出たりすることがあります。友人のアンプの例だと、 低域から高域に掃引しながら特性を調べると正常なのですが、高域から低域に掃引すると3kHz付近に山が出てきたことがあります) また問題にはならないと思いますが、高域における裸のゲインの低下も考慮していません。
 NF型のイコライザーは、アンプの裸の利得の影響を受けるので、イコライザー回路を精密に決めにくい面があります。特に裸の特性を良くしようとしてNFBを掛ける前の利得を低くしているアンプだと、NFBを掛けた後の低域側の利得が不足しがちですので、イコライザー回路を変更する必要があります。



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