センサレスハンダごて温度コントローラの製作 その2
(2012年12月5日、2013年1月追記)
その1はこちら(2SK2186を使い最初に製作したもの)
その3はこちら(2SK2372に変更し電圧検出用抵抗を交換可能にして汎用化)
その4はこちら(温度制御の高精度化)
前回、センサレスハンダごての温度コントローラ(その1)を作りましたが、手元には、もう一本ハンダごて(gootのCXR-30)があります。これは、通常使っているCX-40が壊れたときの予備という位置付と、細かいパターンのハンダ付けが可能なように細いこて先が使えるということで持っています。
あと、買った時にはあまり考えていなかったのですが、PX-601などと共通のこて先が多数あるので、こて先を交換してハンダ付けすることも可能になります。しかし、CX-40に較べるとヒーターの電力が小さいために、ハンダ付けの感覚が違い過ぎてほとんど出番がありませんでした。
とは言ってもCX-40がいつまでも使用できるという保証がないので、CXR-30を使う必要に迫られたときに対応できるようにしておきたいと思っていました。CXR-30には、CXR-40或いはCXR-41のヒーターが使えるのは簡単に調べることができましたが、CX-40に比べるとヒーターの電力が不足しているように感じます。より強力なヒーターを使うことができればCX-40と同等或いはそれ以上に応用範囲が広がると思われます。
ネットで色々調べていたら、PX-60Hが使えるとの情報がyamada_radio_clinicさんのサイトにありました。PX-601用のヒーターで70W相当らしくそのままCXR-30に入れて使うと高温になり過ぎて使えませんが、温度コントローラを使うことを前提にすれば温度コントローラ付きのCX-40と同じように使える可能性があります。
そこで、PX-60Hを購入し、CXR-30+PX-60H用の温度コントローラを作ってみることにしました。
(回路の検討)
前回と同様に基本的な回路は、Toshi工房さんの「半田ごて用温度コントローラ」と同じです。
PX-60Hの抵抗を測定してみたところ、室温で約35Ωとかなり低い値です。となると、電源を入れた直後はかなりの電流が流れることになります。そこで回路図に示すように2SK2186をパラにしました。また、整流後の平滑コンデンサも820μFに変更しました。
セラミックヒーターの抵抗変化を検出する抵抗R3の値は、今回のような定数の組合わせだとヒーターの室温の抵抗値の1/50くらいが良さそうなので、0.82Ωにしました。
温度調整用のボリュームは前回と同様に、1kΩBの2連ボリュームをパラにして500Ωとして使っています。ボリューム或いは半固定抵抗の入れている位置も前回と同様です(接点が接触不良を起こした場合でも、ハンダごての温度を下げる方向の位置)。 R1は100kΩの酸化金属皮膜抵抗です。
コンパレータは高速で動作させる必要がありません。また、 yamada_radio_clinicさんのサイトの情報によれば、ヒーターを元のCX-30HからPX-60Hに変更すると、ハンチングが大きくなりやすいということです。そこで感度を鈍くする効果を狙って、コンデンサの容量を大きくしてみました。今回は入力にケミコンの10μFを入れています。
ヒーターに通電していることを示す青色LEDは、秋月で売っているUB3804Xを使いました。高輝度タイプでないと、赤色LEDと光量のバランスが取れないです。
あとは、2SK2186のON抵抗を下げるために、トランスを使った別電源を用意している点、フォトカプラにTLP621を使用している点、発熱を分散させるためと、熱的に余裕を持たせるために抵抗を直列に2本使っている点などは前回と同様です。
2SK2186は手元にあったので使っただけですので、他にON抵抗の低いMOS-FETがあれば1個だけで使用可能だと思います。例えば、秋月で売っている2SK2372、IRFP460Aあたりが使えると思います。
回路図
プリント基板は、ユニバーサルにしました。図中の点が基板の穴と考えて下さい。AC入力とハンダごてへの出力ですが、秋月で売っているプリント基板用のターミナルを使いました。
二作目なので、特に問題もなく組立できました。通電してみると配線ミスが1ケ所見つかりましたが、修正して製作完了です。
ハンダごてを接続すると、青のLEDがすぐチカチカします。ヒーターが強力なので、温まるのが早いようです。こて先温度が320℃でハンダ付けしているときは、ヒーターがONになっている時間が短いです。この点は、ヒーター容量が違うので当然ですが、一作目とかなり違います。気になっていたハンチングですが、特に問題になるレベルではないようです。
外観
電源ONでヒーターOFFの時
電源ONでヒーターに通電中、奥の青色LEDが点灯している。
調整ですが、ボリュームがセンター位置でこて先温度が320℃になるように半固定抵抗VR2を合わせます。この時の半固定抵抗VR2の値は約600Ωでした。続いて、こて先温度を測定しながら300℃、320℃、350℃の位置に印を付ます。
つまみの位置が決まると、回路図の100kΩ(R1)、電圧検出用の抵抗0.82Ω(R3)、それにボリュームVR2+半固定抵抗VR1の値からヒーターの抵抗が計算できます。抵抗の誤差があるので おおまかな値になりますが、計算してみると、こて先温度が300℃、320℃、350℃のとき、ヒーターの抵抗はそれぞれ約92Ω、97Ω、105Ωでした。ヒーターに通電している時の整流後の電圧が約130Vですから、通常のハンダ付けしている時は170Wくらいのヒーターとして働いているようです。
手元にある3種類のヒーターについて、こて先温度と室温の抵抗値との比を調べてみました。こて先はCX-40にCX-40RT-B、CXR-30(ヒーターはPX-60H)とCXR-30(ヒーターはCXR-30H)にPX-60RT-2.4Dを付けています。条件が違うので直接の比較はできませんが、室温の抵抗値との比は似たような傾向になっていました。
(2013年1月30日)抵抗の表示値で計算した結果だと傾向が見えにくかったので、電流検出抵抗R3の値を横河7561マルチメータの四端子法で再測定しました。でも、結果を二桁で表示しているせいもあるのか、結果は変わりませんでした。
ヒーター名 |
室温の抵抗値 |
室温の抵抗値との比 |
300℃ |
320℃ |
350℃ |
goot CXR-30H |
240Ω |
2.6 |
2.9 |
3.1 |
goot CX-40H |
120Ω |
2.5 |
2.7 |
2.9 |
goot PX-60H |
35Ω |
2.6 |
2.8 |
3.0 |
下の写真に示している こて先温度計は、岩井さんから借用中のものです。
岩井さんから借用中のこて先温度計
強力なヒーターと温度コントローラによる温度調節の効果で、常用のCX-40と同等以上にに使えるようになりました。こて先が色々選べるので、広い用途で使えそうです。
前回と今回のハンダごて温度コントローラを作ったことと、岩井さんからこて先温度計を借用できて分かったことは、プリント基板のハンダ付けだとこて先温度が320℃くらいで十分だということです。ネットを調べると350℃くらいに設定するのが適当という情報を多く見かけますが、基板にフラックスが塗ってあって且つ部品のハンダめっきがちゃんとしていれば、意外と低い温度でも問題ないです。逆に大きな部品とか、アースパターン周りのハンダ付けには温度を上げておく必要があります。 このあたりは、今回作ったような温度コントローラがあれば、簡単にハンダごての温度調整ができるので、作業が快適です。
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