センサレスハンダごて温度コントローラの製作 その3
(2014年3月1日、3月8日改訂)
その1はこちら(2SK2186を使い最初に製作したもの)
その2はこちら(2SK2186をパラにして大電流化)
その4はこちら(温度制御の高精度化)
前回(センサレスハンダごて温度コントローラの製作 その2)、前々回(センサレスハンダごての温度コントローラ(その1))とセンサレスハンダごて温度コントローラを作りました。温度調節の効いているハンダごてに慣れてくると、温度調節の効かないハンダごては使う気がしなくなってきます。
センサレスの温度コントローラの長所は、セラミックハンダごてであればそのまま使えることにある訳ですが、各々のセラミックヒーターに合わせて電圧検出用の抵抗を変える必要があります。前の2作は特定のセラミックヒーターに合わせているので、電圧検出用の抵抗は固定でした。これを変更できるようにして、汎用性を持たせた温度コントローラを作ってみることにしました。
製作を終えて動作確認を行い、一段落したところで、「温度コントローラその2」で製作した温度コントローラを改造することにしました。「温度コントローラその2」には、フォトカプラが一個しかないのでどうしようかと考えていたら、コンパレータの出力がオープンコレクタであることを思い出しました。これに気が付いてしまったので、改良版の設計編を入れて書き換えることにしました。
内容
1.温度コントローラ-改良版
(回路の検討)
(製作)
(調整)
2.CXR-30とCXR-31の比較
3.PX-60RT-S4こて先
4.温度コントローラ-最初に製作したバージョン
1.温度コントローラ-改良版
(回路の検討)
今までと同様に基本的な回路は、Toshi工房さんの「半田ごて用温度コントローラ」と同じです。違うところで大きなものは、MOS-FETのゲート電圧を作るためにトランスを用いた電源を別に用意している点です。これにより、MOS-FETのON抵抗が非常に小さくなるので、放熱器を付けなくてもちょっと温まる程度の発熱で済みます。
回路図を以下に示します。電圧検出用の抵抗R3を取り替え可能にすると、コネクタが接触不良を起こしたときにコンパレータLM339の入力に100V以上の
電圧が掛かる可能性があります。このため、コネクタが接触不良を起こしてLM339に高い電圧が加わった場合は、その電圧を検出してMOS-FETの電流を遮断する回路を追加しています。100kΩと3.9kΩで作る電圧は通常の動作範囲よりもかなり高めの電圧になります。R3のコネクタに接触不良などが発生してこれよりも高い電圧が生じた時は、下側のコンパレータの出力が電流を吸い込み、フォトカプラのトランジスタ側が電流を流してMOS-FETのゲート電圧を下げ、電流を遮断するようにしました。また、瞬間的にでもLM339の入力に高い電圧が掛からないように1kΩと12V-1Wのツェナーダイオードを入れて保護しています。
LM339はオープンコレクタなので、並列に接続しています。
コンパレータとフォトカプラを動作させる電源は、7.5kΩ二本の抵抗と12Vのツェナーダイオード、それに1N1418のダイオードで作ります。電源を安定にするために、100μFのケミコンを入れています。逆に、このケミコンがあるために、コンパレータとフォトカプラの立ち上がりが少し遅れ、電源をONにしたときにMOS-FETがONになる時間が生じます。コンパレータの電源が立ち上がらないうちに入力に電圧が加わってくるので、1N1418の保護ダイオードを入れています。LM399のデータシートを見る限りでは問題とならないようですが、気休めに入れました。
MOS-FETは秋月で安く購入できた2SK2372を使用しました。耐圧が高くON抵抗も小さいので便利に使えます。しかし、秋月にはもう在庫がないようなので、代わりに買うとすれば2SK3628か2SK447になります。
7.5kΩと9.1kΩの抵抗は2W以上、100kΩは1Wのものを使います。LM339の入力に入れている1kΩの抵抗は、1Wのものを使います。
AC100Vを整流した後の平滑コンデンサは、820μFを使いました。この位の容量になると、電源スイッチにAC250V 6Aクラスのものを使わないと接点が溶着或いは接触不良を起こしやすくなります。もし、小型のスイッチを電源スイッチとして使うのであれば、平滑コンデンサの容量を200μFくらいにした方がいいです。
ヒーターに通電していることを示す青色LEDは、秋月で売っているUB3804Xを使いました。高輝度タイプでないと、赤色LEDと光量のバランスが取れないです。
フォトカプラはTLP621-1を使いました。
温度調節用の半固定ボリュームVR2は1kΩを使っています。ツマミ付きのボリュームVR1は、マルツで売っているLinkmanのRD925G-QA1-B102 2連式ボリューム B特性 1kΩを使いました。これをパラにして、500ΩB特性のボリュームとしています。これに流れる電流は1.5mA程度なので、他の小さなボリュームでも構わないはずです。
LM339の入力に入れている10μFと1μFのコンデンサは、バイポーラケミコンを使っています。1μFは、1~4.7μFのものであれば問題なく使用できるはずです。
回路図
(製作)
プリント基板は、ユニバーサルにしました。図中の線と線の交点が基板の穴と考えて下さい。図中の太い線は、3A位の電流が流れます。なるべく太い線で配線する必要があります。AC入力、とハンダごてへの出力、それに電圧検出用の抵抗は、秋月で売っているプリント基板用のターミナルを使いました。
部品面側からのパターンです。
以下の写真は、改良前の写真です。回路図と少し違っていますが、製作の様子は分かると思います。
基板を作り終わった状態の写真です。
例によって、CDケースに納めました。
LinkmanのRD925G-QA1-B102ボリューム(左)と少し大型の電源スイッチ(右)。平滑コンデンサの
容量が大きいので、電源スイッチは容量の大きなタイプでないと故障する可能性が高いです。
電圧検出用の抵抗
動作中の様子
(調整)
まず、配線ミスがないかよく確認します。電圧検出用の抵抗R3は、室温におけるセラミックヒーターの抵抗の1/50~1/40くらいにします。ほどんど発熱はしませんが、3Wくらいのセメント抵抗にしておいた方が無難だと思います。これを取り付けます。その後、半固定抵抗VR2の抵抗を約600Ωにしておきます。
電源をスライダックに繋ぎ、とハンダごてを接続して徐々に電圧を上げ、電圧を確認します。うまく動作しない場合は、配線ミスがないかよく確認して下さい。問題がないことを確認できたら、こて先温度計を使い、ボリュームがセンター位置でこて先温度が320℃になるように半固定抵抗VR2を調節します。続いて、こて先温度を測定しながら300℃、320℃、350℃の位置に印を付ます。
こて先温度計は、共立電子産業のハンダゴテ温度計キットが安価でいいと思います。
CXR-30とCXR-31の比較
今回作成した温度コントローラは、CXR-30HにPX-60Hヒーターを入れ替えたハンダごてに使います。また、手元にはCXR-31もあるのでCXR-31にPX-60Hヒーターを入替えたハンダごてでも使うことができます。
ところで、CXR-30とCXR-31は耐熱キャップを使えるかどうかの他にもう一つ違いがあります。
上がCXR-30、下がCXR-31
下の写真で、下の方に並べているスペーサですが、細長い方がCXR-30用で太めで短い方がCXR-31用です。CXR-30用は、私が昔から使っているCX-40のスペーサと同じです。その他の部品は互換性があるようです。
PX-60RT-S4こて先
CXR-30のこて先は非常に細いものが付いてくるので、CX-40の標準こて先であるCX-40RT-Bと似たような形のPX-60RT-Bに替えて使っていました。しかし熱容量が足りないのか、CX-40のようなハンダ付けができなくて使わないでいました。
ところが、あるときにGootのサイトを見ていたらPX-60RT-S4というこて先が売りだされたことを知りました。形を見ると全体に太めで細くなっている部分が短く、先端まで熱が伝わりやすそうな形です。早速取り寄せて使ってみたところ、CX-40の感覚にかなり近く、あまり違和感なく使えることがわかりました。
このS4タイプのこて先は、HAKKOにもありますので、やはり需要があるのでしょう。
あと、ネットでハンダ付けについて書いているサイトを見ると、先端が斜めカットしたものが評判がよいようです。しかしえんぴつ型で慣れていると、斜めカットタイプなどはハンダ付けの向きを決められてしまうので使い難い感じがします。逆にえんぴつ型は方向性がないというメリットがあるので、これはこれで使いやすいのではないでしょうか。
4.温度コントローラ-最初に製作したバージョン
最初に製作してしまったものの回路図、プリント基板パターンです。LM339がオープンコレクタであることを忘れていて、フォトカプラを二個使ってしまいました。当初に書いた文書をそのまま載せます。
(回路の検討)
いままでと同様に基本的な回路は、Toshi工房さんの「半田ごて用温度コントローラ」と同じです。違うところで大きなものは、MOS-FETのゲート電圧を作るためにトランスを用いた電源を別に用意している点です。これにより、MOS-FETのON抵抗が非常に小さくなるので、放熱器を付けなくてもちょっと温まる程度の発熱で済みます。
回路図を以下に示します。電圧検出用の抵抗R3を取り替え可能にすると、コネクタが接触不良を起こしたときにコンパレータLM339の入力に100V以上の
電圧が掛かる可能性があります。このため、コネクタが接触不良を起こしてLM339に高い電圧が加わった場合は、その電圧を検出してMOS-FETの電流を遮断する回路を追加しています。100kΩと3.9kΩで作る電圧は通常の動作範囲よりもかなり高めの電圧になります。R3のコネクタに接触不良などが発生してこれよりも高い電圧が生じた時は、下側のコンパレータの出力が電流を吸い込み、フォトカプラのトランジスタ側が電流を流してMOS-FETのゲート電圧を下げ、電流を遮断するようにしました。また、瞬間的にでもLM339の入力に高い電圧が掛からないように1kΩと12V-1Wのツェナーダイオードを入れて保護しています。
MOS-FETは秋月で安く購入できた2SK2372を使用しました。耐圧が高くON抵抗も小さいので便利に使えます。しかし、秋月にはもう在庫がないようなので、代わりに買うとすれば2SK3628か2SK447になります。
7.5kΩと9.1kΩの抵抗は2W以上、100kΩは1Wのものを使います。LM339の入力に入れている1kΩの抵抗は、1Wのものを使います。
AC100Vを整流した後の平滑コンデンサは、820μFを使いました。この位の容量になると、電源スイッチにAC250V 6Aクラスのものを使わないと接点が溶着或いは接触不良を起こしやすくなります。もし、小型のスイッチを電源スイッチとして使うのであれば、平滑コンデンサの容量を200μFくらいにした方がいいです。
ヒーターに通電していることを示す青色LEDは、秋月で売っているUB3804Xを使いました。高輝度タイプでないと、赤色LEDと光量のバランスが取れないです。
フォトカプラは2回路入りのTLP621-2を使いましたが、TLP621-1を2個並べても同様に使えます。
温度調節用の半固定ボリュームVR2は1kΩを使っています。ツマミ付きのボリュームVR1は、マルツで売っているLinkmanのRD925G-QA1-B102 2連式ボリューム B特性 1kΩを使いました。これをパラにして、500ΩB特性のボリュームとしています。これに流れる電流は1.5mA程度なので、他の小さなボリュームでも構わないはずです。
LM339の入力に入れている10μFと1μFのコンデンサは、バイポーラケミコンを使っています。1μFは、1~4.7μFのものであれば問題なく使用できるはずです。
回路図
(製作)
プリント基板は、ユニバーサルにしました。図中の線と線の交点が基板の穴と考えて下さい。AC入力、とハンダごてへの出力、それに電圧検出用の抵抗は、秋月で売っているプリント基板用のターミナルを使いました。
部品面側からのパターンです。
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