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両端スロートバックロードホーンの製作
(2010年6月製作)

きっかけ
  2010年7月号のstereo誌にP650自作ユニットの付録がありました。これを衝動買いしてしまい、ユニットを作ったまではよかったのですが、どうやって鳴らすかを考えたとき、普通の箱では面白くありません。口径が小さく、低音の出難いユニットを使いこなすには、やはりバックロードホーンしかないということで、バックロードホーンに入れることにしました。

設計方針
 ほとんどのバックロードホーンスピーカーは、スロートが空気室の上端或いは下端に1ケ所だけ設けられています。空気室の容積は、スピーカーユニットの口径に比較してかなり小さく、バスレフ箱のような考え方はできないだろうと思われます。スピーカーユニットからスロートの反対側に出た音の大部分は反射してからスロートに向かうことになります。このようになると、元の波形に反射音が複雑に重なり、音圧を有効に利用できないだけでなく、音質的に好ましくないのではないかと考えていました。(あくまで妄想です。)
 スピーカーユニットから出た音をなるべく円滑にかつ直接スロートに送り込むには、スピーカーユニットに対して円周方向全体にスロートがあればいいのですが、実現するのは無理です。 このような構造を大体満足し、簡単に作る方法として、下図に示すように空気室の両端にスロートを設けることを思いつきました。このようにすれば音の伝わりが円滑になり、スピーカーから出た音をより有効に利用できると思われます。



設計
  P650はQ0が大きく、数字だけ見るとバックロードホーン向きのユニットではありません。しかし、 振動板面積が小さいので低音が出難く、バックロードホーンに入れてもちゃんと鳴るのではないかと思われます。問題は、 ユニットの口径が小さいため実効振動板半径は2.6cm程度で、面積は約21cm2になります。 絞り率を0.5くらいにしようとするとスローとの断面積は10cm2くらいになります。ホーンの幅を10cmにすると、 スローとの高さが1cmです。これを2分割すると、5mmになり、精度が出るとは思えません。
  そこで、バックロードホーンの設計法からは外れますが、絞り率を1程度にしてスロート断面積を20cm2にします。 ユニットの口径が小さいので低音が出難く、こんな設計でもなんとかなるだろうと思われます。また、このようにしておけば、 後でユニットをFE83nあたりに交換しても問題なく使えます。
 ホーン長ですが、ある程度の長さがないと力の無い低音になってしまいますので、2mを目標にします。
  箱ですが、12mm厚のサブロク板1枚でなるべく大きなものを2個作るようにします。最初は、ユニットの口径が小さいので カットオフ周波数が高くてもいいだろうと思い、長岡さんの広がり係数Kの値を1.2で設計してみました。しかし、 ホーンの広がりが大きくてホーン長を長くできないし、ホーン長を稼ごうとするとサブロク1枚に収まりません。 Kを1.12にしてもまだ収まりが悪いです。結局、Kを1.1とすると丁度いい感じで、 長岡さんのよく使っている数字に落ち着きました。
  最終的に、スロート断面積は20cm2、空気室は約0.5L、ホーン長は2m弱、ホーンの広がり係数Kが1.1で カットオフ周波数が約25Hzとなるようにしました。空気室はある程度の容積があればいいのと、作りやすさの点から約0.6Lにしています。
 各部分の寸法と板取図面を下図に示しますが、 外寸が、幅124、高さ424、奥行き430となりました。 スロートは上下端に設け、その後に続く音道の合成部は45°の三角材を使って音の伝わりがスムーズになるようにしています。 ⑱の100×100の板は、補強のために使用しています。
 ホーン長が2m程度と短いので、中高音がホーンから漏れてきて、エコー感が強く出ることが予想されます。このため、 箱を組み立てる途中で箱の開口部にフェルトを貼り付けて中高音を吸収するようにします。




製作
 板は、ジョイフル本田で切ってもらいました。

まず、側板に組立位置を書き込んで行きます。面倒でも、両面に正確に書き込みます。

スロート部の板を組み立てます。スロートの幅が狭いので、
この図と次の図のように、三角板と現物合わせで隙間を調整します。

カッターナイフや、かんななどを使って、隙間が10mmになるように削ります。
調整が終わったら削った面に(上の写真のように)ニスやボンドを塗ります。

内部の板を先に組み立てて行きます。

上下と奥の板を取り付け、ターミナルを取り付けます。

続いて、空気室、スロート部を取り付けます。内部の仕切り板も、ある程度組み立てておきます。
このとき、木ねじで締め付けると歪みが出ることがありますので、カッターナイフで削るなどして
調整しておきます。

前面の板、内部仕切り板を取り付けて行きます。開口部の奥の
板を2段に重ねていますが、適当な余り板を付けています。

順番に組立てて行きます。

内部の仕切り完成

口径の小さいユニットなので、音圧が下がらないように空気室からホーンの途
中までニスを塗ります。また、開口部付近は黒いフェルトを付けるので黒いペ
ンキを塗り、板の色が目立たないようにします。

最後に取り付ける側面の板にもニスを塗っておきます。

吸音用のフェルトを貼り付けます。

側板を取り付けて組立終了

凹凸を隠すためのパテを塗ります。

箱内部のボンドとパテが十分乾いてから、とりあえず、2~3回ペンキを塗ります。

ユニットを取り付けて、音出ししてみます。
エコー感が強く、吸音材を追加しないといけません。

凹凸を隠すために、ペンキを塗って、十分乾かして、削って、という操作を繰り返します。
ある程度、納得できる状態になったら終了です。端子を保護するため、端子の上下に棒を
付けてみました。

中高音の漏れがかなりあるので、橙色の部分にニードルフェルトを追加しました。
開口部のニードルフェルトは、目立たないように黒のスプレーを吹きつけました。
これにより、エコー感、音の濁りはかなり改善されました。

意外と高音が出難いユニットなので、ツィータを追加します。PT-R5を
使用しましたが、レベルが合わないので3.3Ωと10Ωの抵抗で-5dBの
アッテネッターを作り、追加します。

インピーダンス特性
①P650単体
 P650単体のインピーダンス特性です。手作りした割には、左右ともよく合っています。


②P650を箱に入れたとき
 上の図のカーブから、高域側をフラットにする補正値はおおよそ10Ω+3.9μFと計算されます。しかし、手持ちのコンデンサの関係で10Ω+4.7μFを使いました。
 箱に取り付けてみたときのインピーダンス特性です。高域側は、ほぼフラットになっています。スロート絞り率が1と大きく、Q0も大きなユニットなので、ホーンロードが掛からないのではないかと心配しましたが、インピーダンス特性を見ると十分にホーンロードが効いているようです。
出てきた音
 実際に音出ししてみると、中音重視のユニットの特性が出ているため、高音が不足です。このため、PT-R5を追加しました。中音中心の音に変わりはないですが、分解能が上がり、聴きやすい音になりました。  ユニットの口径が小さいので、100Hzよりも下は再生レベルが低下しますが、70Hzくらいまではなんとか再生できています。しかし、バックロードホーンの効果である程度のバランスは改善されていると思います。
 Bud Powellの「クレオパトラの夢」、Oscar Peterson Trioの「You Look Good to Me」などのように超低音が入っていない古い録音だと普通に再生できます。むしろ、中音重視のユニットの特性と合っているようで、生き生きと再生できます。

他に自作或いは改造したバックロードホーン一覧
長岡式D-112(改)スパイラルホーンの製作
長岡式D50の改造 その2 と、ユニットのインピーダンス特性比較
長岡式D-50バックロードホーンスピーカー

長岡さんのバックロードホーンスピーカーのパラメータ


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