長岡式D50の改造 その2 と、ユニットのインピーダンス特性比較
(2007年7月)
1.D-50の改造 その2
2.インピーダンス特性
3.音
1.D-50の改造 その2
(1)砂、吸音材の追加
2006年10月頃、下の図のように開口部と空気室下部のデッドスペース(灰色部分)に砂を入
れ、空気室にも下側(薄緑)と横の下側(桃色)にボンドで
練った砂をつめました。
ユニットから出た音を なるべく効率良くスロートに送り出そうという意図があって、こうしてみたものです。 また、開口部にフェルトを置いて中高音を吸
収するようにしてみました。 ボンドで練った砂はかなりデッドニングの効果があるようで、ボンド+砂を詰めた場所は外から叩いたとき響く感じが押さえられ
ます。 以上の改造によって低音の量感が増すとともに、砂による重量増加の効果か 箱鳴りが抑えられた効果か 残響感がかなり少なくなり、すっきりした音
になっていました。
これに気をよくして、空気室上側も音の送り出しを効率良くしようと思い、下図右側のように空気室上部にボンドと砂を入れてみました。 これによって空気
室が少し小さくなり、中高音もホーンに送り出されやすくなるようなので、左側の図のように開口部の奥にフェルトを貼り付け、中高音の吸収をよくしてみまし
た。
空気室にボンドで練った砂を追加したことによって、空気室の上側を外から叩いてみると以前のようにコンコン響く感じではなく、コツコツと振動が抑えられ
た感じに変わっています。
今回の改造は前回の改造に較べると改造部分は少ないのですが、音はかなり変わった感じです。低音がかなり強調されるようになり、また再生範囲がより低音
側に伸びた感じになりました。
(2)メインユニット、インピーダンス補正の変更
部屋が狭いため、左右のユニットの音の違いによる影響が大きいので、春頃に自作のユニットからFOSTEXのFE206Σに変更しました。 自作ユニッ
トは悪くはないのですが、個体差が大きいせいで音像が若干動く感じがあったためです。(部屋が大きければ、問題にならないと思うが) メーカー製ユニット
に変えてみると、ユニット間の差が小さく、音像があまり動かなくなりました。
ユニットのインピーダンス補正ですが、以前は10Ω+3.3μFにしていました。補正をあまり強くしたくないと考えていたこととが大きな理由ですが、
もう一つは、昔はフィルムコンデンサが高くて容量の大きなものを買えなかったことの名残で、なんとなくこの値を使ってきていたのです。 今回は、きちんと
インピーダンス補正をしようと思い、10Ω+6.8μFに変更しました。
インピーダンス補正の変更により、高音側はかなり大人しくなりました。 リボンツィータのハイパスコンデンサの容量を、1μFから1.5~2μFに変更
する必要があるくらいの変化でした。
(3)ツィータの変更
部屋が狭いためか、FT66Hのホーンツィータは、聞く位置によって高音のレベルがかなり変わっていました。 比較的大人しい音質と言われている
FT66Hでも、ホーンの特性が出てしまうようです。 かといって、指向性が良好なホーンツィータだと高額になってしまいます。 高価なツィータを買って
結果が悪いと困りますので、ツィータをどうするか困っていました。 そうこうしているうちに、パイオニアのPT-R7がなんとなく目につきました。 以前
から名前は知っているユニットですが、能率が低いという思い込みがあって、検討してこなかったものです。 しかし、改めてスペックを見ると、能率が
95dB/m・W(PT-R7)、96.5dB/m・W(PT-R7A)と、かなり高い数字です。 これだったら、FE206Σ、FE206Sと組み合わ
せても、能率で負けることはなさそうです。 指向性は、ホーンツィータでは考えられなくくらい良好で、狭い部屋でも使えそうです。
残る問題は、音質の違いです。長岡さんの本なんかを読んでいると、FEシリーズには音が違いすぎて合わないと書いています。しかしながら、
私の場合はインピーダンス補正をしていて、かなり大人しい音で再生できています。 そこで、思い切ってPT-R7A同等品のS-955内蔵ユニットをヤフ
オクで落札してみました。
ハイパス用のコンデンサを1μにして接続してみると、特に違和感なく鳴ってくれましたので、 すぐに、FT66Hと置き換えました。
しかし、 しばらく聞いてみると、 コンデンサだけのハイパスフィルターでは中音域まで再生して音が濁る感じがあります。そこで、0.25mHのコイル
を入れて12dB/octのハイパスフィルタにしてみました。結果は良好で、中音域への影響がほぼなくなりました。
2.インピーダンス特性
(1)今回改造した箱にFE206Σを取り付けた場合
今回の改造を行った後のインピーダンス特性を下図に示します。3kHz以上の高域側は、インピーダンス補正の効果でほぼフラットになっています。左右の
差も殆どなく、よく揃った特性です。
(2)過去に改造した時のインピーダンス特性との比較
現在までに、何度か改造したときのインピーダンス特性を比較した図を以下に示します。
まず、ユニット単体のインピーダンス特性を先に示します
が、大澤式FE206S改は大澤さん製作の糸ダンパー・伊勢型紙渋紙コーン紙・和
紙エッジのもので、糸ダンパーの張力が弱めでf0が低いユニットです。
FE206Σ改は、糸ダンパー・伊勢型紙渋紙コーン紙・和紙エッジです。
糸ダンパーの張力は強めにしています。このためか、
f0が高めになっています。
FE206Σ改BK用は、上と同様に糸ダンパー・伊勢型紙渋紙コーン紙・
和紙エッジです。 バックロードホーンでの使用を考えて、エッジからの空気漏れを減少させるため
和紙エッジの幅を狭くしています。 糸ダンパーの張力は強めにしていますので、
f0が高めになっています。
FE206Σは、コーン紙を張り換えてもらって2ヶ月間くらい使用したものです。前の二個と較べると、特性がかなり違っています。
ところが、このように特性の違うユニットを、空気室の構造が違うD-50に取り付けても、
50~300Hzのピーク位置は殆ど変化しません。 もともとのボイスコイルの直流抵抗が違うために差はあるものの、72Hz付近、125Hz付近の
大きなピークと、165Hz付近、220Hz付近、280Hz付近の小さなピークは、ほぼ同様の曲線です。 曲線もほぼ同じ変化を示しています。
こ範囲のインピーダンスは、ホーン部分の構造が支配的であるようです。
しかし、20Hzより下に現れるピークは、ユニットのf0によって変わっているように見えます。 単体で一番f0周波数の低い大澤FE206S改のピー
ク周波数が約12Hzと一番低く、単体でf0周波数の高いFE206Σが約21Hzと一番ピーク周波数が高くなっています。大澤式FE206Σ改と大澤式
FE206ΣBK用の違いは、コーン紙の面積の違いによるものと思われます。大澤式FE206ΣBK用は、コーン紙の面積が大きいため、背圧がかかりやす
くなりf0が低めになったのだろうと考えています。
3.音
今回の改造、ユニットの変更で、ホーン臭さというかエコー感がかなり抑えられたと思います。インピーダンス補正とリボンツィータの効果で、大人しい音に
変身し、ホーンらしさが弱まった感じはありますが、個人的には好みの音になったかなと思っています。
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